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無声映画の残存数・残存率に関する参考文献

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01: Treasures from the Film Archives: A Catalog of Short Silent Fiction Films Held by FIAF Archives

Ronald S. Magliozzi(編)FIAF 1988年 855 p.

国際フィルムアーカイブ連盟(FIAF)に加盟する世界25カ国33機関が所蔵する無声映画(ただし〈短編劇映画〉に限る)およそ9,000作品の、国別および年代別の目録。製作年は1894〜1948年に渡り、データ項目は題名、出演者、製作会社等を含む。2009年のCD-ROM版は現在もFIAFのウェブサイトで販売されている(€100)。ここで〈短編劇映画〉の定義は厳密ではなく、上映時間1時間以内(35mmの場合、4,000ftより短いもの)を目安とする。

書籍 >> http://d.hatena.ne.jp/filmpres/15150001

*編者のロナルド S. マリオッツィ(ニューヨーク近代美術館映画部門)によるアイリーン・バウザーのインタビューをこちらに掲載しています。

02: Keepers of the Frame

Penelope Houston(著)BFI 1994年 179 p.

映画評論家で元『Sight&Sound』編集長のPenelope Houstonによる映画保存およびフィルムアーカイブに関する史的研究。巻末付録 “How much has been saved?”(pp. 165-174.)に、英国の国立フィルム&TVアーカイブ NFTVA(現BFI国立アーカイブ)が調査した各国の主要フィルムアーカイブ(45カ国59機関)のコレクション規模と収集率――自国で製作された映画の何%を収蔵しているか――が示されている。分類は劇映画、記録映画、アニメーション。ただし無声映画を抽出した数字ではない。これによると、東京国立近代美術館フィルムセンター(NFC)の当時のコレクション数は13,522本、日本映画の収集率は7%であり、インド国立フィルムアーカイブの6%と並んで極めて低い数値となっている(06: 2012年現在65,517本・収集率15.9%)。

書籍 >> http://d.hatena.ne.jp/filmpres/01090001

03: Silent Cinema: An Introduction

Paolo Cherchi Usai(著)BFI 2000年 212 p.

現ジョージ・イーストマン・ハウス映画部門ディレクターのパオロ・ケルキ・ウザイによる無声映画の入門書。ケルキ・ウザイは第4章レイダース/失われたナイトレート《硝酸》(Chapter 4 Raiders of the Lost Nitrate)で残存数に言及し、FIAF加盟フィルムアーカイブに残存する無声映画(ただし〈長編劇映画〉に限る)をおよそ8,000作品と見積もっている。上記02:の〈短編劇映画〉と合算すると計17,000作品。著者は2000年の段階で、その後も増加し続けるFIAF加盟フィルムアーカイブの数(2014年現在77カ国156機関)や劣化が進行して廃棄処分される作品の数を考慮しても、無声映画の所蔵数の総計が3万本を下回ることはないとしている。

書籍 >> http://d.hatena.ne.jp/filmpres/00010001

*本書は映画保存協会に全文和訳があります。内、2010年に名古屋学芸大学メディア造形学部研究紀要3に第1章セルロイドの恋(Chapter 1 The Romance of Celluloid)が掲載されました。

04: 途方に暮れつつ、集めつづける――海外に残存する戦前日本映画を対象としたフィルムセンターの映画収集事業

とちぎあきら(著)インテリジェンス 10(特集 戦争と文化財・資料――その略奪と行方)2008年 pp. 29-40.

NFC映画室長によるこの論考では、日本映画の残存率(NFCの収蔵率)は「0.1%(1910年代)、3.5%(1920年代)、9.9%(1930年代)」となっている。また、2006年に行われた試算によると日本劇映画【A】の総製作本数(1910〜2005年)は32,353作品である(最新の数字は05:を参照のこと)。この試算の根拠となったのは主に『日本映画作品大鑑』(キネマ旬報社)、『日本劇映画作品目録』(社団法人映画公社)、『映画年鑑』(時事映画通信社)。当時NFCの所蔵データベースに登録され、日本劇映画【B】と分類されていた作品数は5,172で、収集率は15.9%とされたが、【A】【B】の定義・分類は一致していなかった。

雑誌 >> http://d.hatena.ne.jp/filmpres/14140002

05: 映画保存とフィルム・アーカイブ活動の現状に関するQ&A

東京国立近代美術館フィルムセンター(NFC) 2012

「Q: 65,517本の内訳はどうなっていますか」に対する答えの中で、残存率は次のように解説されている。「戦前期、特に無声映画作品の残存率は、欧米諸国のそれと比べてきわめて少ないです。フィルムセンター所蔵の作品数で計算した場合、年代別に0.2%(1910年代)、3.8%(1920年代)、10.7%(1930年代)、29.8%(1940年代)となります。小津安二郎監督の戦前作品はその半分近くが失われ、溝口健二監督の場合は8割が失われています。世界的に見ても有数の映画大国であった戦前の日本映画は、残念ながらその大半の作品が(現在のところ)失われている状態です」。2012年の時点でNFCが所蔵する日本映画は57,164本(内、劇映画は10,587本/5,559作品)になり、これは1910〜2011年までに公開された日本劇映画の総作品数(34,892)の15.9%にあたる。

ウェブサイト >> http://www.momat.go.jp/FC/filmbunka/

06: The Survival of American Silent Feature Films: 1912–1929

David Pierce(著)米国議会図書館 2013 63 p.

元NFTVA(現BFI国立アーカイブ)のデイヴィッド・ピアスによる米国の無声映画(ただし〈劇映画〉に限る)の残存に関する最新の報告書。ここでは完全版(国内配給用の35mm)として残存する作品が1,575(14%)、国外配給(別言語)版の35mm、または28mm、16mm、9.5mmといった小型映画の形状で残存している作品が1,174(11%)、不完全版やダイジェスト版が562(5%)で=計30%――つまり70%は失われてしまったという結論が出ている。加えて所蔵機関、完全度、形状等についても詳しく検討され、この結果を踏まえて次の6点が推奨されている。

1 今後も海外のフィルムアーカイブから米国に無声映画が返還されるような共同計画を打ち出す。
2 無声映画の長期保存用素材の取得に関して、映画会社とフィルムアーカイブの連携を深める。
3 小型映画として残存する無声映画の同定・識別作業において、フィルムアーカイブと蒐集家の連携を促進する。
4 関心が高まるばかりの小型映画の保存に焦点を合わせる。
5 題不明のままになっている無声映画の記録を国内外のフィルムアーカイブが協力して作成する。
6 一般・研究者向けの無声映画の上映会や再発見の機会を増やす。

PDF >> http://www.loc.gov/today/pr/2013/files/2013silent_films_rpt.pdf

*東京国立近代美術館フィルムセンターのNFCニューズレター47、48、51号(2003年)には、同じくデイヴィッド・ピアス(著)『罪びとの群れ――アメリカの無声映画が消え去った理由』が和訳掲載されています。
*同ニューズレター 103号「映画はどこで、どのように保存されているのか 日/米ナショナル・フィルム・アーカイブからの報告 講演採録(1)」(2012年)の中にも残存率への言及があります。

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