寄贈機材の目録作り

*このレポートは2010年度アーカイブズ・カレッジ短期講座の修了論文として提出したものを改訂したものです。

中川 望

はじめに

小型映画部では、8ミリフィルムを中心としたホームムービーなどの状態や内容の調査を行っていますが、フィルムをお預かりする過程で、すでに使わなくなったカメラや映写機といった機材について相談されることも多く、寄贈も受け付けています。私たちとっては当初は≪ホームムービーの日≫やフィルムを調査するために機材を「使う」目的で受け入れることが多かったのですが、徐々に「もの」としての価値付けをして、多くの方に8ミリをはじめとする小型映画の文化を知っていただき、後世に伝えていくにはどのようにすべきか、という観点に変わってきました。そのためにはきちんとした目録の整備が必要です。ということで、寄贈を受けた機材の目録化と公開について、実践をしてみました。

機材の種類

小型映画にはさまざまな規格が存在しますが、個人の方からFPSに寄せられる機材の多くは8ミリです。日本国内では9.5ミリは戦前にその流行が終わり、16ミリは主に記録映画の制作や図書館・学校などで教育映画の貸出・上映用として普及し、家庭で撮影・上映を楽しむのは8ミリが最も一般的だったのがここでも分かります。
ただ、すでに16ミリフィルムの貸出事業を終えた公共機関から使わなくなった視聴覚機材を大量に受け入れたこともあります。映画関連会社が廃業する際に35ミリ用の機材を譲っていただいたりといった経験もあります。個人から寄贈していただいた9.5ミリの機材を参考に、笹川財団の助成金を得て、会員が9.5ミリ調査用のリワインダーやカウンターを新たに製造しました。寄贈件数や保管台数は多くはありませんが、種類はバラエティに富むようになってきています。
しかし、小型映画部の仕事はフィルムの調査が中心なので、エディターやリワインダー、スプライサー、リール、映写機などは頻繁に使用しますが、カメラとそれに関連するものはほとんど使わないなど、使用頻度に大きな違いが出てきます。また、FPSの手元に来た時点ですでに故障している機材も多く、修理不能なものはそのまま奥に片付けたままになってしまうことも多いです。機材が増えるにしたがって、「使う」ことだけが目的のままでは、機材の扱いに差が生まれてしまい、せっかくいただいたのにもったいない状態になることもしばしばです。
そこで、もともと映画保存資料室データベースで運営していた目録を充実させて、ウェブ上で機材を見ていただく機会が増えたらよいのではないかと思うようになりました。今まで作っていた目録はあまりに穴や項目のバラツキが多く、個人の記憶に頼っている面もあったので、出来るだけ会員の間で共有することができたら、機材に関する興味がより広がるのではないかとという期待もあります。

機材の受け入れから目録作り

機材の寄贈の問い合わせは、FPSの活動が新聞などのメディアで取り上げられた際や、イベントの終了後に受けることが多いです。持ち主とのやり取りは主にメールで行います。
機材は宅急便でFPS事務所に配送されてきます。箱を開けて、以下の項目をメモし、それを元にEXCELで表を作成して、持ち主に寄贈書類とともに郵送します。これが最初期の概要調査です。

  • 受け入れNo.(箱に入っていた順に決めることが多い)
  • 機材の種別(映写機、カメラ、スプライサー、リールなど)
  • 機材名(製造会社と機種名)
  • 付属品(箱やカバーの有無、ACアダプタなどが中に入っているかなど、見た目で分ること)
  • 点数

寄贈書類を取り交わした後、詳細の目録作りに入りますが、ここで大きな悩みが生まれました。
もともと映画保存資料室で運営していた目録は、機材の種別ごとに分けて記録していて、アーカイブズカレッジで学んできた「フォンド」・「シリーズ」・「アイテム」の原則に合いません。もちろん寄贈者が誰だったか、という記録は記載しますが、いったんバラバラにしてしまった後に元通りにできるだろうか、という疑問が浮んできました。現在は寄贈を受け付けた時の担当者の記憶と、寄贈書類や受け入れ時に作った表を併用して出所を明らかにすることができますが、会員同士で情報を共有して同じ業務を行うことはできるか、という不安はあります。これは今後の課題にしたいと思います。
機材の種別ごとの詳細目録は、映写機とカメラに関しては、ドイツで出版されたこちらカタログに基づき項目を作り、まずEXCELに入力します。

  • 映写機:Jurgen Lossau,“MOVIE PROJECTORS 16mm・9.5mm・8mm・Single-8・Super-8”, Atoll Medien, 2005(映画保存資料室
  • カメラ:Jurgen Lossau, “THE COMPLETE CATALOG OF MOVIE CAMERA”, Atoll Medien, 2003 (映画保存資料室

これ以外の機材については、できるだけこの二つと大きく違いのないように、一般化できて、見た目で分かるものを選んで、主要な機材は以下のような項目を立てて目録を取り直しました。

【表1 機材目録の項目】

項目名 映写機 カメラ ビュワー スプライサー
No.
形状(08/95/16/35)+機材種別+通し番号

(種別P)

(種別C)

(種別E)

(種別S)
メーカー
機種名
対応形状
(セメント・テープの別も)
音声
(光学・磁気の別も)
×
レンズ
レンズ名、F値、焦点距離
× ×
ランプ
V/W、種別、電球名
×
対応リール
設置できるリールの大きさ(ft)
× ×
幅/高さ/奥行き(mm)
重さ(g)
シリアルNo.
付属品
寄贈者の情報
故障・修理状況
備考

最初に目録をつけはじめたとき、フィルムの形状で通し番号を分けてしまったため、例えば8ミリ映写機と16ミリ映写機で同じ番号を持つ機材が生まれてしまいました。このまま機材種別ごとに管理を続けていくのであれば、「映写機」というカテゴリの中にのどのフィルム形状のものも入るような通し番号の方がよいのではないかと思い、思い切って番号を付けなおしました。

今後の目標

ここまでもいくつか取り組むべきことを挙げてましたが、もう少しいろいろと頭の中で考えていることを整理します。

修理とメンテナンス
詳細な目録を作るときに、汚れやカビなどをアルコールで除去しています。また使用する機材、特に映写機は修理ができるか確認し、同時にしばらく動かさないと故障の原因になるため、数ヶ月に1回ほど空回転しています。これらの修理の履歴はできるだけEXCEL上に記述するようにしていますが、漏れがかなり多いため、記録をきちんととることは大きな課題です。
同時に機材の受け入れには部品取りの目的もあります。しかし時間と技術両方の面で修理ができる会員はいませんし、まだ修理にも時間と資金がかかるために、見通しは明るくありません。映写ランプなどの消耗品も入手が難しくなっていますので、大規模な修理や活用は行わず、自分たちで手に負える範囲でのメンテナンスをし続けながら使い、出庫するたびに状態のチェックを怠らないようにしたいと思います。

寄贈者からの聞き取り
寄贈者とのやり取りは主にメールになるので、どのように機材を保管されていたかなどをきちんと伺う機会があまり多くありません。8ミリで撮影を楽しんでおられた方がすでに亡くなられていて、そのご遺族からの寄贈されることも多いため、事情がよく分からないこともあります。今後はできるだけご本人・ご遺族からの状況聞き取りに力を入れて、その記録も残していけるように努力をしたいと思います。

増える種別に対応するには
今までも何に使うのか分からない機材があったように、その種別が果てしなく増えていくのではないかという不安があります。また目録上には「付属品」という項目を設けましたが、目録に収まりきらないようなテープ類・リーダーなどの消耗品、チラシなどの紙資料があります。やはり「フォンド」・「シリーズ」・「アイテム」の出所原則に従えば、これらもうまく納められるのに・・・と後ろ髪引かれる思いはありますが、最初期の概要調査もきちんと行って、お互いにカバーしていく必要があります。

保管場所
現在機材のほとんどは作業場に持ってきて保管・整備をしていますが、保管場所がいっぱいになってきました。新しい機材と出会うたびに勉強になることも多いので、とても嬉しいことなのですが、積極的に寄贈を受け入れることができないのはこのためです。これは今後いつまでもついてくる問題です。棚を新たに設置したり、整理整頓して空間をうまく使いながらやりくりしていかねばいけません。

写真撮影と展示
写真撮影と展示は機材がどんなものか知っていただくために大切です。撮影はまだまだ追いついていませんが、ある程度誰でも撮影できるような場所と機材を確保することが必要だと感じています。
また、毎月第2・4火曜日に開催している「ちいさな試写会」の時に、機材を1台ずつ展示して、当日いらしたお客様に見ていただき、その際簡単な説明をつけることによって、情報を蓄積していければと考えています。

終わりに

目録作りのために機材を出し入れしてみて、改めて機材の種類の豊富さに気づきました。形のおもしろさや機能美も感じました。かつては数多くメーカーが存在したので、その歴史を調べることができたら楽しいだろう、と思ってしまいますが、そこは自重して、目録作成に専念することが先決です。まだ量が少ない今のうちに、ある程度の方針を決めて、寄贈から目録入力・撮影・展示までのサイクルを作り、会員の誰もが入力と情報共有をできるようになるのが目標です。その過程をウェブ上で明らかにして、研究者や今も制作を続ける映像作家、メーカーなどのご協力を仰げればと思います。

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