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東アジアの映像アーカイブ

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東アジアの映像アーカイブ

はじめに

欧米の映像アーカイブの話は時々耳にすることがあっても、東アジア各国の映像アーカイブについてはほとんど知られていないのが実情です。しかし! アジアの映像アーカイブも日々精力的に活動を展開しています。そこで、東アジアの4つの主要な映像アーカイブを、各ホームページから紹介します。

各ホームページを見て驚いたのは、どの映像アーカイブも情報を積極的に公開していることです。残っている映画の数、財務状況、スタッフ数の少なさ…… どこも大変な状況にあるのは同じなのですが、ならば情報をどんどん発信して、支援や意見を募ろうという印象さえ受けます。インターネットという情報を「文字・映像・音声」で世界中へ発信できる技術と、その国の文化の一部である映像アーカイヴとの関係は今後情報公開や映画保存の世界でもっと議論されてもいい問題かもしれません。

この記事は2006年のメルマガFPSに掲載されたものを一部訂正加筆したものです。最新の情報ではないことをご了承ください。

第1回 中国電影資料館/中国電影芸術研究中心(中華人民共和国)

http://www.cfa.gov.cn/ (中国語のみ)

中国電影(電影=映画)資料館は1958年に開設され、1980年には国際フィルムアーカイブ連盟(FIAF)の正式会員になりました。1984年には「文学芸術研究院」の映画研究所と合併して、中国唯一の国家レベルの映画研究所「中国電影芸術研究中心」(中国映画芸術研究センター)を設立、現在は二つの名前を冠しています。

ここでは映画フィルムの収集や保存だけでなく、映画理論研究や映画教育のほか、『中国電影週報』や『当代電影』、『電影』など4つの専門誌の出版事業も行っています。共産国圏のフィルムアーカイブとあってか、保存と研究を合体させたかなり大きな組織のようです。現在職員は340名、27,200本余りのフィルムは北京と西安の二つの収蔵庫に納められています。なお、1949年(中華人民共和国成立)以前の作品は400本足らず、1949年以降の作品はほぼ網羅されています。

さて、ホームページは2005年末にリニューアルされました。ホームページはトップページのほか、主に7つのコンテンツから構成され、「館蔵資源」(所蔵資料)は未完成ですが、「読者服務」は対外サービス、「芸術影院」は上映施設、「専業刊物」は専門誌、「館内専家」は所属する専門家のプロフィール(一部のみ)、「研究生部」は中国電影芸術研究中心の学生募集案内や講義カリキュラム、「関于我們」では全体の紹介が掲載されています。なかなか情報量の多いホームページです。また、左側のバーにあるコンテンツでは、組織機構の詳細や資料館の沿革、写真、中国の映画保存に関連する法律などを見ることができます。

特徴的なのは、やはりフィルムアーカイブにしては珍しい「研究生部」のコーナーがあることでしょうか。カリキュラムを見ると、映画史からドキュメンタリー研究、国別映画研究などがあり、課外活動では北京の郊外にある収蔵庫で修復や保管の様子を見学しているようです。一方、アーカイブ方面での技術者については特に記載がありませんが、「中国電影資料館が長年形成した工程の流れや業務規範」とあり、また、「大学及び大学院の卒業学生による素質向上」とあるので、内部で技術者の養成をしているようです。なお、中国の映像アーカイヴの収蔵庫…… 興味はありますが、収蔵庫の様子を詳しく紹介しているページは見当たりませんでした。

“保存”と“研究”という両輪で、映画の世界を動いている中国の映像アーカイブですが、中国でも映画保存はいろいろな問題に直面しています。例えば、中国には1994年に制定された「電影芸術档案管理規定」という法律があり、これは映画作品のコピーを電影資料館に納入することを義務付けたものですが、コスト負担や著作権問題などでプロダクション側や映画審査機関との間に矛盾が生じているため、制度がスムーズに運用されていないようです。また、国内外に散らばるフィルムの収集や古い映画の修復・保存でも、予算不足から満足な結果を生むことができないという、他国のアーカイヴとまったく同じ問題も…… 。

しかし、国の体制の違いとはいえ、中国の映像アーカイブは(組織としては)かなり良い方に入るのではという印象を受けました。ホームページは読み込みが若干重いことや、中国語のみで英語など他言語の表記がないなど、多少使いづらい点が見られましたが、情報そのものは比較的頻繁に更新されているようです。また、ジャン・レノが「譲・雷諾」、「スチーム・ボーイ」が「蒸汽男孩」など、中国語の表記を見るのもなかなか面白いです。お隣の国、中国でも映画保存活動は頑張っています。一度ご覧になってみてはいかがでしょうか?

■参考サイト(中国語)
膠片保存:影找到家
http://zhengzhou.blogbus.com/logs/2004/04/
保存機制未成熟 電影資料保護容易収集難
http://www.ynet.com/view.jsp?oid=5999327

メルマガFPS Vol 8(2006/01)

第2回 國家電影資料館(台湾)

www.ctfa.org.tw/ (中国語/英語)

「國家電影資料館」は台湾の国立映像アーカイブで、台北市にあります。その前身は1979年に行政院(日本の内閣に相当)新聞局が民間と協力して設立された「中華民國電影事業発展基金會」付属の映画図書館で、1989年に映画文化資産を保存する目的から「電影資料館」と改名しました。その後、政府の予算・監督下で運営する財団法人となって現在に至り、1995年には国際フィルムアーカイブ連盟(FIAF)の正会員として国際的なフィルムアーカイヴ活動にも参加しています。

國家電影資料館のホームページは最近リニューアルし、すっきりしたデザインでさらに見やすく、使い勝手も良くなりました。ホームページにアクセスすると、まず目に飛び込んでくるのは数々の名作。「高山青」の主題歌で有名な『阿里山風雲』(1949)や、中国映画史上初の長編アニメ『鉄扇公主』(1941)、キン・フー監督の最高傑作『侠女』(1971)まで、さまざまな映画が紹介され、期待が高まるスタート・ページです。

ホームページは主に9つのコーナーで構成されています。「最新消息」はお知らせ、「關与我們」は館の紹介や沿革、「電影教室」は上映プログラム、「影展活動」は国内外の映画祭紹介、「獎助資訊」はドキュメンタリーやショートフィルムの賞(アワード)と助成金の説明、「典藏介紹」は所蔵品の紹介、「圖書館」は図書検索、「出版區」は出版物の紹介と購買、「電子報」はメルマガ登録・解除となっています。驚くべきことは、ホームページの内容が非常に細かい点まで行き届き、詳細な内容が具体的に掲載されていることです。例えば、映画保存の業務紹介から始まり、復元ポリシー、手続き方法まではどのサイトにも掲載されている内容だと思いますが、國家電影資料館は、「こちらも予算が限られています。ご協力を」と書き添えて修復・複製の料金を明確に公開し、復元への協力者を募集しています。例えば、白黒の35mm(オリジナル)を新しい35mmフィルムにコピーするには100分で38万元(約136万円、状態によって価格の変動あり)など…復元料金の目安がこんなに明確に示されているとはいささか驚きです。なお、復元費用の出資者は雑誌「電影欣賞」で発表されるほか、フィルムのトップに名前が記され、コピーしたフィルムを館内で無料鑑賞できます。そのほか、所蔵品の映画フィルムやポスター、資料などの対外貸し出し料金もきちんと公開されています。

気になるのは所蔵品。これは「典藏介紹」のコーナーに掲載されています。こちらの記載によると、台湾でも映画が文化財として保存されるようになったのは近年のことで、他のアジア諸国と同様、多くの古い台湾映画が失われてしまったようです。現在、所蔵されている劇映画は3,200本余り(そのうち、台湾語映画は228部)。ドキュメンタリー映画は16mmが2,800本余り、35mmが500本余りで、他にも台湾のテレビ局が製作したニュース映画なども多数所蔵されています。また、台湾の映画会社各社から寄贈されたカメラや上映機材、編集機材、台湾国産の現像機材(!)なども集めています。古い劇場や古い映画に携わった人々が残していった物が、映画文化の貴重な証拠になるのだという記述には深い共感を覚えました。

ほかにも、「電影教室」では各プログラムを組んで国内外の映画を上映していますが、ここでも驚くべきは、なんとこの「電影教室」、入場が無料です。場合によっては「座談会の参加者にはプレゼント贈呈」なんていう記述も…太っ腹過ぎます。ちなみにホームページを見た時に行われていたのは「犯罪映画特集 Part2」でした。

図書資料のオンライン検索や出版物の紹介と購買、代表的書籍である「電影年鑑」は全ページがPDFで閲覧可能など、ホームページからはサービスがとても行き届いているという印象を受けました。もちろん、英語ページも、中国語ページの約7~8割が英語化されているので中国語が読めない人でも大丈夫。館の概要を知りたいなら、十分カバーされる翻訳です。

「國家電影資料館」のホームページは数ある映像アーカイヴの中でも、情報公開の度合いや使い勝手の良さでいえば、かなり上位に入るのではないでしょうか。旧ホームページにあった掲示板(BBS)が消えていたことは残念でしたが、それを差し引いても十分満足できる内容です。小津安二郎と侯孝賢のように、映画の世界でもたびたび相似点や親近感が指摘され、今は海外旅行先としても幅広い世代に人気がある台湾の映像アーカイヴは、とても充実度の高いホームページでした。リンク集(右上の「網站連結」→「電影資料庫」のページはオススメ!)をたどれば、台湾のほか、アジアのさまざまな映画情報にもアクセスできますよ。

メルマガFPS Vol 9(2006/02)

第3回 韓国映像資料院(韓国)

www.koreafilm.or.kr/ (ハングル/英語)

日本映画界にとってお隣の国、韓国は、今やアメリカのハリウッド以上に注目されている国でしょう。才能溢れる優秀な監督、魅力的で層の厚い俳優陣、映画界を支える公的支援の充実…韓国は現在の東アジアで最も積極的、そして国民全体が総合的に映画に取り組んでいる国という印象を受けます。

韓国で唯一の公的映像アーカイブである「韓国映像資料院」については、FPSのホームページにメンバーによる詳細な訪問記が掲載されています。保存活動の様子についてはそちらをご覧いただくとして…ここではホームページから、その特徴や気付いた点を述べることにしましょう。

「韓国映像資料院」(Korean Film Archive=KOFA)が設立されたのは1974年。文化観光部の傘下に設立されたこのアーカイヴは首都ソウルの瑞草区にあり、所蔵作品をビデオ及びDVDで公開する資料室が、瑞草本院のほか、「プチョン国際ファンタスティック映画祭」の富川市と『冬のソナタ』のロケ地で有名な春川市にあります。

ホームページは画像を多く配置し、目にも楽しく美しいデザインで、トップページを見れば一目で何が起きているかわかるように配慮されています。ページを主に分けると、上・中央・左右にメニューがあり、上部メニューはKOFAについて、中央は上映作品や講座、入札公告のお知らせ、左側は所蔵資料の貸し出しや閲覧、保存活動についての案内、右側は資料室案内やニューズレター登録、「韓国映画研究」と題した韓国映画史についての説明などで構成されています。

所蔵資料の対外貸し出しや閲覧などで明確に金額と手順を公示している点は台湾の國家電影資料館と同様、オープンで透明度の高い印象を受けました。そして、ホームページのコンテンツの中で注目すべきは、韓国映画の専門データベースサイト「KMDb」です。

「KMDb」は最近オープンしたばかりで、韓国のIT政策を担う情報通信部が支援し、KOFAが構築した韓国映画の統合検索データベースサイトです。作品や人名、シナリオ、ポスター、書籍、評論など韓国映画に関するさまざまな分野の情報を網羅し、韓国映画や海外映画、ドキュメンタリー映画などの作品情報(2万6千件余)、人物情報(3万5千件余)、ポスター(1万件余)、シナリオ(1万2千件余)、論文(2千件余)、記事・評論(3万件余)、CD/DVD(13万件余)などを提供しています。韓国はIT方面でも日本に比べて進んでいると聞いていますが、映画についてもここまで進んでいるとは驚きです。

また、KOFAが自身の存在を積極的に対外アピールしている点も特徴的といえるでしょう。右側にある「広報映像」からはシンボルマークの説明のほか、「映像資料院を完全征服」とした9分近くのフラッシュ映像、韓国映画界の重鎮、兪賢穆(ユ・ヒョンモク)監督、韓国を代表する俳優の安聖基(アン・ソンギ)、“韓国のマドンナ”とも言われる歌手で女優の嚴正化(オム・ジョンファ)の3人を起用した韓国映画保存の重要さを語るミニPR、KOFAの公式トレーラーまで! 用意してあります。

英語ページもよく出来ています。すっきりとわかりやすいのはハングル版のページと同じですが、面白いのは所蔵作品のコレクションが左上に掲載され、劇映画から書籍までの所蔵本数が随時表示されている所です。ここを見れば、「あぁ、韓国にはこれだけの映画が残されているんだな」と一目でわかる親切な作りとなっています。

所蔵資料の公開や施設案内、お知らせの掲示などは当たり前、KOFAのホームページは、映画という「文化」とインターネットという「情報技術」を上手に融合し、効果的な公開を実現しているという印象を受けました。映画作りや支援政策など、映画では見習うべき点の多い韓国ですが、映画保存もどうやら同じようです。“韓流”を支える存在は、こんなところにも息づいているんですね。

メルマガFPS Vol 10(2006/03)

第4回 香港電影資料館(香港)

www.filmarchive.gov.hk (中国語/英語)

中国、東南アジア、アメリカ、日本--香港映画はさまざまな文化をミックスしながら変化を遂げてきました。そんな香港映画を収集・保存する「香港電影資料館」のホームページも、そんな混合性を象徴するように3つの言語、英語、繁体字中国語、簡体字中国語のバージョンが用意されています。ちなみに、簡体字中国語のバージョンで閲覧しようとすると、繁体字→簡体字に文字を変換するソフトについて「免責条項に同意しますか?」と出ます。何のためなのかはよくわかりませんが、一見したところ、繁体字・簡体字両バージョンとも記載内容はまったく同じでした。

「香港電影資料館」(Hong Kong Film Archive)は1993年にその運営計画が出され、以来、香港映画の収集・保存や企画上映を行ってきました。現在の資料館が香港島の西灣河にオープンしたのは2001年4月です。資料館は総面積7,200平方Mの4階建てビルで、映画館や展示室など対外活動向け施設のほか、フィルム倉庫や資料保存庫も併設されています(倉庫は独立した冷却設備や、ビネガー・フィルム対応の設備もあるようです)。

ホームページは主に6つのカテゴリーにわかれ、そのほか、資料館の説明/香港映画一覧表/50-60年代の香港粤劇映画一覧表があります。粤劇とは香港映画と密接な関係にある広東語による地方劇です。2つの一覧表はPDF公開され、それぞれ575ページ、11ページとボリュームがあります。

6つのカテゴリーは「資料館功能」「服務設施」「放映節目/展覧」「館蔵」「通訊」「出版刊物及記念品」とあります。

「資料館功能」は資料館の職務活動について、映画の修復や資料整理、研究活動、上映のプログラミングなどが紹介されています。

「服務設施」は対外向けの施設説明です。展示室のほか、映画館は127席(車椅子用も4席)、さまざまな上映速度や規格に合わせて変えられる映写設備を用意し、ここで企画上映やシンポジウムが行われています。資源中心(資源センター)ではさまざまな映画書籍や雑誌などが集められ、視聴ブース(1人用×5、3人用×2、団体用×1)もあり、古い映画から最新の香港映画までが視聴可能です(事前登録が必要)。

「放映節目/展覧」は上映や展示についての案内。現在は「香港国際映画祭」のプログラムが幾つか上映され、5月は中川信夫監督の特集上映! です。

「館蔵」は所蔵資料について。これによると、現在の所蔵本数は5,600本余りで、やはり戦前の映画についてはあまり残っていません。最も古い作品は1898年にエジソン社が香港の風景を記録したドキュメンタリーで、古い香港映画としては1930-40年代の作品が多くを占めています。

「通訊」とは資料館発行のニューズレターで、PDF公開もされています。「香港映画の南洋根源」や「映画修復小百科」など、面白そうなコンテンツも……。バックナンバーの目次も閲覧可能です。

「出版刊物及記念品」は発売中の刊行物について。香港映画の百科事典「香港影片大全」は現在、1964年までの第5巻まで刊行されています。

というように、香港電影資料館のホームページは、あまり凝った作りではないものの、初めて訪れる人にもわかりやすいシンプルな作りで、他のページへ移動しやすいように上下にリンクが張ってあるなど、使いやすい印象を受けました。左上の3つの言語ボタンをクリックすればすぐに文字が入れ替わるのも特徴的です。

現在、このホームページは毎月最初の木曜日をシステム修復日としています。「当日は一時的にページが閲覧できなくなるかもしれません」という掲示が出ていますので、ご注意を。

メルマガFPS Vol 10(2006/04)

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