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絵金さんは待ってくれた

高知は赤岡町で毎年7月に開催される「絵金祭り」がはじまったのは、1977年のことだそうです。絵金(1812-1879)は元は狩野派の画家であったのですが、贋作騒動に巻き込まれ、それまでの作品のすべてが焼かれてしまいました。その後、民衆画家として郷里の土佐に腰を据えたことで、おどろおどろしい画風が際立つ数多の作品が赤岡町に残されたのです。祭りの期間中は夕暮れ時から絵金屏風が商店街の軒先に展示され、蝋燭の灯りに極彩色煌めく画が浮かび上がるというのですから旅情をそそられますが、実は今年(2005年)になってこの町に、米蔵を改装した「絵金蔵」(資料館兼ねる)が目出たく完成しました。蔵ができたことで、絵金の作品は散逸を免れ、保護され、祭りの期間でなくとも鑑賞され、研究者にとっては現物へのアクセスが容易になる、というから良い事づくしです。しかし祭りのはじまりから蔵の完成まで30年近い歳月が必要だったとは、絵金さんもよくぞ待っていてくれたものです。フィルムさんは果たして待ってくれるでしょうか?《ホームムービーの日》のようなお祭りを開催し、地域に眠るフィルムを集めてみると、それらが1本残らず大切に保存されるべきなのに、できない、というジレンマに苛まれます。残念ながら自信をもっておすすめできる小型映画の寄贈先というのは、未だ国内には見あたりません。《ホームムービーの日》の継続が、各地で小型映画の収集、保存、活用のシステムが確立される一つのきっかけになりますように—これは小会の描く夢に過ぎませんが、人々の情熱によってついに誕生したという絵金蔵に、一筋の希望の光を感じずにはいられないのでした。(K)

会報fps第3号(2005.10.10発行)より採録

通称「絵金祭り」は毎年7月第3土・日曜日に高知県香美郡赤岡町の本町・横町商店街で開催されます。

Language: English

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