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韓国映像資料院(2003)

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韓国映像資料院(2003)

2003年7月、知人を訪ねて3日間滞在した韓国にて、願ってもないチャンスに恵まれました。米国のジョージ・イーストマン・ハウス(GEH)で映画保存を学び、現在は母国で映像アーキヴィストとして働くオ・ソンチさんが、彼女の現職場である韓国映像資料院(Korean Film Archive=KoFA)を案内してくれたのです。土曜の朝の慌しい訪問となりましたが、週休2日制が浸透していない韓国のこと、スタッフの方々は通常通り出勤されていて、皆さんたいへん親切に接してくださいました。

KoFAの設立は1974年。韓国唯一の映像アーカイヴとしてFIAF(国際フィルム・アーカイヴ連盟)にも加盟しています。ソウルの中心街から地下鉄(LINE 3)で30分ほど南にある最寄駅「Nambu Bus Terminal」から、さらに10~15分歩かなくてはならないので、場所は少々不便です。KoFAは独立した建物を持たず、山を背にそびえる巨大な芸術文化施設「SEOUL ARTS CENTER」の一角を占めます。

入口から続く広い通路の両側には、韓国の映画スターや巨匠監督の巨大パネルが掲げられています。中でも誇らしげなのは第58回FIAF総会(ソウル、2002年)の巨大なポスター。KoFAは東アジア初のFIAF会議のホスト国でもあります。1階にフィルム倉庫とフィルム以外の資料(ポスター、スチル、映画台本、ビデオなど)の保管室、インスペクション・ルーム、そして二つの上映施設(大きい方で100席)、2階に事務所、図書室、ビデオブースなどがあります。全体的にとてもゆったりとしているのですが、独立した建物や新しいフィルム倉庫の計画も具体化しつつあるとのこと、今後、増員を含めて益々規模が拡大されるのかもしれません。現在の職員数は事務系も含め約30名です。

気になるフィルム検査室には4~5台のスティンベックに加え、新品のCTMの編集台なども並んでいます。テレシネもここで可能であるほか、Lipsner Smithのフィルム・クリーナーまで設置されています(韓国では溶剤の規制が日本ほど厳しくないとのこと)。検査作業は若いスタッフが中心となって担当し、 原則として検査スタッフがフィルム情報をデータベースに入力し、フィルム・ケース用のラベルを打ち出し、入庫する、という効率的な流れになっています。しかもインスペクション・ルームからすぐのことろにフィルム倉庫の入口があるので、動線も確保されています。

韓国には既に映画のリーガル・ディポジットの制度があり(1996年~)、公開されたすべての韓国映画の台本とフィルムは必ずKoFAに納入されることになっています。所蔵フィルム数は2003年7月現在で約14,000本。フィルムは不活性プラスティックのアーカバル・ケースに入れて保管されます。欧米のフィルムアーカイヴも、通気が良いプラスティック製ケースを使用していることが多いようですが、KoFAの特徴は原版と上映用ポジでケースの色分け(鮮やかなオレンジとブルー)をおこなっている点です。実際に倉庫に入ってみると、これが素晴らしいアイディアであることは一目瞭然です。倉庫ではロケーション番号のバーコード管理も既にはじまっています。さらに近い将来、海外ラボへの依頼も視野に、本格的な復元プロジェクトも始める予定とのことで、今後が楽しみです。

一方で、小型映画などの特殊フォーマットや、ホームムービーなどの劇場用長編以外のジャンルには、まだほとんど目が向けられていません。ナイトレート・フィルムも一切保管されておらず、無声映画の数も10件に満たないというのは驚きでした。

紙資料(ノンフィルム)に関しては温湿管理が十分とはいえません。また映画機材に関しても整理が追いついていない様子です。但し、ビデオ保存やデジタル・アーカイヴ事業には力が入っています。デジタル化プロジェクトの一環として、KoFAのサイトでは充実した韓国映画データベースが公開されていますし、所蔵作品のデジタル化だけでなく、新作映画に関してはDVDの購入も着々と進んでいます。ビデオブースにはヘッドフォンをつけてモニタに見入る学生風の利用者の姿がちらほら。利用料は1作品200ウォン=約20円と安価で、所蔵ビデオの中には日本映画のタイトルも多数含まれます。

所蔵品へのアクセス提供の問題を考えるとき、研究者を対象に所蔵フィルムを出庫し、スティンベックを開放したり、あるいは映写技師を手配して映写したりすることは、(閲覧の目的にもよりますが、コンテンツの確認だけが目的であるなら)フィルム保護のためには不適切のように思われますし、そもそも人材不足のフィルム・アーカイヴには実現不可能なサービスです。妥協策として、KoFAや、 やはり以前訪問した京都文化博物館がそうであったように、リクエストに合わせてテレシネをおこない、利用者には原則としてビデオ/DVDを閲覧してもらうサービスが採用されることが多いようです。韓国映像資料院では、劇場での上映は常時おこわれているわけではなく、そのあたりはプログラミング/上映の仕事が何よりも優先される日本のフィルム・アーカイヴとは対照的です。

共に訪問した知人が「ダイナミック・ソンチ」と名付けるほどに元気なソンチさんは、映画保存だけでなくプログラミングや映画祭の運営にも関心があり、韓国で精力的に上映活動をおこなう「シネマテーク」側の人々とも交流が深いようです。ちょうどこの訪問は新しいKoFAの院長が選出されつ つある時期とも重なり、ソンチさんもその結果がとても気になる様子でした。もしAMIA会議などで再会することが可能であれば、私には想像も及ばない国家規模のアーカイヴの仕事について、改めて教えていただきたいと思っています。

この見学を可能にしてくれたソンチさん、この訪問に同行してくれたアンディ・ジャクソン氏(韓国文化研究者)に、心より感謝します。

*この訪問の後、ソンチさんとともに「プチョン国際ファンタスティック映画祭」に出かけました。学生を中心とする(年配の観客はほとんど見かけることがない)会場の熱気、ボランティア・スタッフの迅速かつ丁寧な対応や段取りの良さに圧倒されるばかりで、そのとき体感した韓国映画の熱風は、現在では日本も席巻しています。ソンチさんには、同じくGEHで映画保存を学んだYun Yeomさん(SKY Ghem TV Inc.)と、映画祭ディレクター/映画監督のキム・ホンジュンさんをご紹介いただいきました。現在、韓国国立芸術大映像学科の教授でもあるキムさんは、ソウルで「リアル・ファインタスティック映画祭」を主導されています。
※FPSの映画保存資料室には韓国映像資料院のパンフレットや韓国映画のDVD等が充実しています。ぜひご利用ください。

追記:
KoFAは2004年に中国電影資料館で日本統治時代(1910~45年)の朝鮮人監督映画を発見し、4作品「軍用列車」(徐光霽監督 1938年)、「志願兵」(安夕影監督 1941年)、「家なき天使」(崔寅奎監督 1941年)を復元、公開しました。大阪のプラネット映画資料図書館で発見された「解放ニュース」も同じくKoFAで不燃化され、2005年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映されました。このときは院長(42歳で民間から大抜擢されたイ・ヒョイン氏)自ら来日し、講演をおこないました。
2008年には移転も完了し、リニューアル記念のフェスティバルが華々しく開催されました(FPSもお招きいただきました)。スコセッシのフィルム・ファウンデーションや日本の業者と協力して古典映画を復元したり、8mmフィルムをデジタル化したり、併設シネマテークでの上映がはじまったり、エントランスに展示スペースができたりと、KoFAの規模や活動内容は2003年当時から大幅に変化しています。

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