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第14回SEAPAVAAバンコク会議報告

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第14回SEAPAVAAバンコク会議報告

4867716464_fb7cf510f2_m.jpg第14回を迎えた東南アジア太平洋地域視聴覚アーカイブ連合(SEAPAVAA)の年次総会が、タイはバンコクの真新しいBANGKOK ART AND CULTURE CENTRE(BACC)を主会場に、2010年8月3日から8日まで開催された。小会が初めてSEAPAVAAを紹介する短い記事をHPに載せたのは2003年、賛助会員として入会したのは2006年のことだが、総会への参加はカンボジア(2007年)、フィリピン(2008年)に続きまだまだ3度目。カンボジアでは《映画の里親》制度に関して発表し、フィリピンでは会期中の上映会に映像を提供したものの、今回は残念ながら初日と2日目の会議及び4日目の見学会に参加するのみで、何の貢献も果たせなかった。

当初6月に予定されていたこの総会、実はタイの政情不安によって2ヶ月延期されての開催だった。参加者に用意された高層ホテルそびえるセントラルワールド一帯はデモ隊の拠点だったエリアで、その後のテロの影響からホテルに連結するデパート(伊勢丹)も封鎖されていたようだ。この騒動のために参加をキャンセルした知人も何名かあり、総参加者(毎回100名程度)に占める欧米からの参加者の数は明らかに激減した。しかし驚くなかれ、なんと日本からは奇跡的に5名もの参加者が! どうりで、いつもなら開催直前になると「日本からはFPSだけなんだから、何か発表しなさい」という催促メールが届くのに、今年は何もなかったわけだ。

今回はまず、東京国立近代美術館フィルムセンター主幹/国際フィルムアーカイブ連盟(FIAF)会長の岡島尚志氏が、初代会長のレイ・エドモンドソン氏(オーストラリア)、ジム・リンドナー氏(米国)、Misbach Yusa Biran氏(インドネシア)と並んでフェローに選出された。これを記念し、岡島氏とエドモンドソン氏のマスターレクチャーや華々しいセレモニーもおこなわれた。岡島氏は、アジアの映画大国・日本の代表としても、権威あるFIAFの代表としても、SEAPAVAAにとって極めて大きな存在だ。ほかの3名は、日本の民間企業3社からの参加者だった。何をきっかけに興味をもたれたのか、詳しくお聞きできず残念だったが、言葉の壁も何のその、営業活動に奮闘されている姿は頼もしく、まさかこんな日がこようとは… 皆さんがSEAPAVAAに対してポジティブな印象を抱き、来年以降も日本からの積極参加が持続することを祈るばかりだ。と同時に、大学関係者や非営利の収集保存機関からの参加者も増加しなくては意味がない。小会が広報宣伝につとめたところであまり効果は期待できないが、それでもできる限りの努力をしたい。

4861446351_4f40eb68dd_m.jpgさて、今年のテーマを無理矢理訳すと「協調的行動のためのコミュニティ構築」。類縁の視聴覚分野の専門職団体の紹介や、ユネスコの世界視聴覚遺産の日/世界の記憶 MOWプログラムのプロモーション、視聴覚アーキビストのトレーニング、デジタル化/マイグレーション/アクセス提供などの諸問題、SEAPAVAAの倫理規定(Code of Ethics)の策定等々… ネットワークづくりに重点を置きつつも、議論は実に多岐に渡った。とりわけ倫理規定の今後には注目したい。小会会員も、草の根団体ながら入会時と更新時は活動ルールに署名することになっているし、FIAF倫理規定は必読書に選ばれてもいる。

IMAGICAの清野晶宏氏は、韓国映像資料院(KOFA)所蔵の映画を素材に、復元のワークフローを紹介された。復元のための資金繰りや復元版のDVD化を利用したアウトリーチ活動に関する発表は記憶にあるが、現像所によるフィルム→フィルム復元の発表というのは、SEAPAVAAはじまって以来の快挙だったのでは? まるでAMIA会議やJTSのような技術的な発表内容に驚いた参加者もあったかもしれないが、復元も映画保存活動の重要な一部であることがわかりやすく伝わったはず。いかにして韓国とのコラボレーションが実現したのか、人と人の関係がみえてくるような情報が追加されれば、会議のテーマに一層近づくものになったかもしれない。KOFAの総会参加も当初は予定されていたようだが、うまくいかなかったとのこと。

過去の会議とのもっとも大きな違いは、ラウンドテーブル・セッションを通して参加者の積極的な対話が促されたことだろうか。英語圏の「いつものメンバー」のイニシアチブが目立ったものの、こうした努力を毎年続けていくことで、場の雰囲気はさらに良いものになっていくはずだ。会場からの発言では、インドのメディアファクトリーの話題が印象に残った。EU圏のデジタル・アーカイビングに関しては、ノルウェー国立図書館/国際図書館連盟(IFLA)の43ある部会・分科会の一つ、視聴覚&マルチメディア分科会代表のトロンド・ヴァルベルグ氏より、以下が一挙紹介された。国内でも話題の「MAL連携」を念頭に、ざっと眺めていただきたい。

EUROPEANA
DISMARC
EUROPEAN FILM GATEWAY
ARROW-NET(オーファンワーク)
EU SCREEN(TVコンテンツ)
MIMO PROJECT

4871070499_a1bb9a2e75.jpg揃いのポロシャツ/Tシャツで出迎えてくれたスタッフは皆、申し訳ない気持ちになるほど献身的で、SEAPAVAAならではの主催者のホスピタリティーや参加者のフレンドリーさにもすっかり癒された。ランチやディナーの時間も参加者は時間を共有できるので、いたるところで小さな議論が沸き起こる。個人的には、ブリスベンの公立公文書館で視聴覚コレクションを担当する女性と親しくなった。シンガポール生まれの彼女は、結婚を機にオーストラリアで暮らすようになり、現在の職を得たのだとか。当初は何の知識もなく、ビネガー臭を発する8,000本の映画フィルムや、時代遅れのフォーマットのテープ素材を前に途方に暮れる日々。しかし果敢にも2009年のFIAFサマースクール(ボローニャ)、そして今回初のSEAPAVAA会議に参加して、精力的に知識を吸収している真っ最中。AMIAのメーリングリストにも登録済みとのことで、きっとどこかで再会できるはず。タイ政府からの奨学金を得て来年から4年間、米国で視聴覚保存を学ぶ予定というタイの若い女学生さんとも出会った。これからUCLA MIAS、NYU MIAP、セルズニック・スクールから一つを選択することに。日本でも「どこがお勧めですか?」という質問を時折受けるが、いたいけな瞳で問いつめられると、軽々しい返答はできず困ってしまう。

2日目の夜には恒例の上映会があった。1920~60年代のホームムービーには、会場から自然とくすくす笑いやつぶやきが… そう、ここで醸し出されたのは《ホームムービーの日(HMD)》とまったく同じ空気だった。中には行進する日本軍やタイ王室関係の断片映像も。そういえば、タイは東南アジアから現在唯一のHMD参加国でもある。感激のあまりCHMの仲間に即座にメールしたほどだった。

4867097839_8577deee00_m.jpg4日目の施設見学では、まずテレビ局(チャンネル7のニュース・インフォメーション・センター)を見学… テレビ局といえば会議のもう1つのトピックとして、テレビ用の最古のテープフォーマットである「2インチ」に関する情報提供等の呼びかけがあった(アンケート調査実施中)。次に訪れたのが、お待ちかねのタイ・フィルムアーカイブおよび映画博物館だが、何よりも、2005年に掲載したこちらの記事(ボランティア・プロジェクト:タイ国立フィルム・アーカイブにて)に目を通していただきたい。親愛なるブリギッタが育て上げたこのフィルムアーカイブを、奇しくも彼女の誕生日(8月6日)に訪れることになろうとは…

タイの映画文化を支えるドーム・スックウォン氏とチャリダー・ウアバムルンジット氏が語ってくれた「タイ・フィルムアーカイブの未来予想図」には心が躍る。既にこの報告は助長気味のため詳しく書けそうにはないが、これから毎年のように新しい展開があることだろう。アトリエ・マニュークの記事に情報満載のため参照されたい(「観衆の歴史に寄り添う場所ーータイ国立フィルムアーカイヴの新しい博物館」2008年)。小会が散々お世話になってきたウアバムルンジット氏は、今年も東京国際映画祭の招きで来日されるので、再会が楽しみでならない。1点だけ、ここで使用されていたインスペクション・シート(調査カード、カルテなど呼び名は様々あるようだが、映像アーカイブが日々蓄積し、データベースに入力するデータの原本としているもの)について記したい。なんとタイのシートは厚紙(!)に印刷されていて、ファイルに綴じずともキャビネの中でそのまま整理、閲覧できるという優れもの。項目は英語表記で、ベース素材によって用紙の色がピンク、ブルー、白と色分けされている。小会も世界各地の事例を参考にオリジナルのインスペクション・シートを作成し、なかなかの力作と自負しているが、このシートは衝撃的だった。まだまだ工夫の余地はありそうだ。

会議の登壇者が使用したPPTは、今回もCDRにまとめて全員に配布された(このサービスは本当にありがたい! 会議2日間分と3日目のワークショップを含む数百件の画像も入っていた)。配布資料は全体的に少なかったものの、上記インスペクション・シートのサンプルや、ニュージーランドのフィルムアーカイブのパンフレット、タイ語のFIAF倫理要綱(冊子版)など、珍しい資料をいくつも入手できた(小会の資料室にて閲覧可能)。そして気になる来年のSEAPAVAA会議は、「天国にいちばん近い島」が開催候補地に。開催地も開催時期も、FIAF会議(南アフリカ)の日程が公表された後に確定される… SEAPAVAAのウェブサイトにご注目を。

*SEAPAVAAのすべての関係者の皆さま、とりわけチャンネル7のチーフ・アーキビスト Khjohnsak Songmoonnark氏にはたいへんお世話になりました。Laew Phop Kan Mai Na Ka。記してここに感謝いたします。(K)

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