2007年5月某日、ご近所にお住まいの活弁士・坂本頼光さんが、お土産を携えてふらりと事務所に立ち寄ってくださいました。気になるそのお土産の中身はといいますと… なんと映画フィルムが10ロールも!お仕事柄、ファンの方から託されたり、ご自身がネットオークションで購入されたりと「いつのまにか集まってしまった」フィルムたちとのこと。すべて手のひらにおさまるほど小さなものばかりでした。
頼光さんは蒐集家ではありませんし、ナイトレート素材となると自宅での保管は危険です。そこで、これらフィルムの命運が小会に委ねられたわけですが、小会とてフィルムを「集めない」ことを活動ルールに掲げているほどです。一時的にお預かりするのは良しとしても、最終的には作品ごとに相応しい収蔵先を探すことになるわけで、この作業には苦労が絶えません。しかし難しい作業であるだけに、1本のフィルムの寄贈を仲介することからも学ぶことは実に多いものです。
お預かりしたフィルムを調べてみると、10本中8本は35ミリ幅の染色ナイトレート断片又はダイジェストなど、いわゆる《玩具映画》でした。オリジナルのパッケージは紙箱ありアルミ缶あり、カラフルでとても可愛いらしいものです。
玩具映画とは、戦前の日本で手回しの映写機用に販売された家庭用ソフトのことで、現在では上映されることも滅多にありません。海外では常識的に、家庭用といえば安全第一、不燃性の小型映画(9.5ミリや16ミリ)と決まっているそうです。ジャンクフィルムを切断して断片を販売した例はあっても、可燃性を家庭用ダイジェスト版として映写機とセットで販売するなどという危険な行為は、日本特有の事例だとか。日本人、なかなか大胆です。
そして「玩具映画」といえば、大阪芸大・太田米男教授の玩具フィルム・プロジェクトでしょう。太田氏は劇映画も含め様々な作品の救済に関わっていらっしゃいますが、とりわけ注目すべきは「玩具フィルム」に的を絞った収集&復元プロジェクトです。さっそく寄贈の可能性について太田教授に問い合わせてみることにしました。はてさてどうなることやら…
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