第11回ホームムービーの日報告

2013年の第11回〈ホームムービーの日(HMD)〉では、小会会員が愛知県知多郡阿久比町と青森県弘前市の2会場で世話人をつとめました。本部NPO法人ホームムービー・センター(CHM)によると、世界では17カ国90会場以上が参加。神戸ドキュメンタリー映画祭に組み込まれたHMD神戸、長野県上水内郡飯綱町の公民館を会場にしたHMD飯綱等、国内では全18会場が登録しました。昨年より若干の縮小となりましたが、それでもCHMの期待を大きく上回る規模になったようです。ここでは弘前、そして阿久比の報告をいたします。

ホームムービーの日 専用サイト
http://homemovieday.jp/

HMD弘前

HMD弘前世界より1週間早く10月12日、今年で8回目ですが、まだまだ地元で知られていない弘前会場では、「弘前市市民参加型まちづくり1%システム」の助成を受け、毎年HMD会場として奥の和室をお借りしている蕎麦屋「めん房たけや」のお店全体を使い、2名のゲストをお招きして開催しました。

第1部では仙台会場世話人ことNPO法人20世紀アーカイブ仙台の坂本英紀さんに、回想法を学ばれての上映活動と震災を経て地域の映像を地域で活用している事例をお話しいただき、第2部では、8ミリ7本・16ミリ1本を、無声のフィルムはサイレント映画ピアニストの柳下美恵さんの生演奏付で上映しました。

お客様からは「電子メディアは時代とともに機材が進歩し、素材、機器ともに記録再生できなくなっておりますので、坂本英紀様のアーカイブ活動は大変貴重で尊いお仕事です」「柳下さんのピアノでホームムービーを見られるのはものすごくぜいたくなこと、1回だけのはかないイベント!」との声が寄せられました。

今回チラシ制作をプロに依頼したのですが、チラシで使用した昔の弘前の写真は市立図書館でデータ提供してもらったとのこと(そんなサービスを行っ
ていることを初めて知りました)、これを見ての来場も多く、お客様はのべ60人弱といつもの3倍でした。

さて、HMD日本事務局は2014年から活動内容を刷新して再始動します。現在、開催資料の収集や「今年の一本」DVDの制作等、準備をしているところです。2014年のHMDは10月18日、弘前会場も開催予定です。(竹森 朝子)

HMD阿久比

HMD阿久比10月19日(土)、愛知県は知多半島の田園地帯を4両編成の赤い電車に揺られ、〈ホームムービーの日〉(HMD)の開催地となった阿久比(あぐい)町というところに行ってきました。阿久比という地名の由来はなんと平安時代にまで遡るそうです。人口は2.7万人。ゆるキャラは町の名物=蛍の「アグピー」です。

既に取り壊しが決まった町立公民館では、町制60周年記念/「あいちトリエンナーレ」平行企画として、栗本百合子さんのインスタレーション『記憶の遊園地』の制作が進行中でした。町民を巻き込んで壁や窓に自由奔放に描くという賑やかな試みは、普段の栗本作品とはずいぶん趣が異なります。入退院を繰り返し、治療と制作を同時に続ける栗本さんの、その細く小さな体のどこからこんな大きなエネルギーが生まれるのか、不思議でなりません。

日本でも2003年に愛知と福岡で始まったHMDですが、日本初のHMD会場の一つとなった豊橋のジャズ喫茶グロッタに11年前集まったスタッフは、転職したり結婚したり母になったりとそれぞれの時を重ねつつ、今年はこの公民館に三々五々集まってきました。

役場の助っ人さんの働きが頼もしく準備万端整っていたので、栗本さんに遊園地内を案内してもらうと、「中学時代ここでバトミントンの練習してたんです」という若い男性が彼女と懐かしそうに見学していたり、「今朝の新聞をみて」来場したというご婦人方に「この町は財政が豊かなのよ」と教わったり。そうそう、今年は愛知でシェア8割を誇るという中日新聞の子版に初めてHMDを紹介する記事が載り、その効果か開始30分前には用意した椅子席がほぼ埋まる勢いで、最終的に来場者は60名を超えました。

さて、上映作品にも少し触れなくては報告になりません。愛知といえば豪華絢爛なお嫁入りが有名ですが、今回は異なる所有者による結納、披露宴、新婚旅行のフィルムが順に上映されました。当初フィルムの集まりが悪いと聞き、自らの作品を提供した上で町民に協力を呼び掛けてくださった竹内啓二町長は、スクリーンの中では23歳。初めて買った愛車スカイラインでいざ新婚旅行へ出発!隣で微笑む優しそうな奥様とは高校時代に出会い、大学卒業後すぐ結婚されたのだとか。アンケートには「やっぱり町長は格好いい」という誇らしげな感想もありました。

「ごんぎつね」の舞台でもある阿久比の近隣には、新美南吉記念館、ミツカン〈酢の里〉、『風立ちぬ』で注目されたカブトビール工場跡等、実は見所がたくさんあります。名古屋方面に行かれることがありましたら、ぜひ訪れてみてください。

ところで、米国のNPO法人ホームムービー・センターがHMD〈今年の一本〉世界篇DVDを制作した際、日本から最初に選ばれた作品の一つが栗本さんの『冬の光景』でした。今年、DVDではなくウェブ上で6年振りに世界篇(Home Grown Movies)が公表され、日本からは2011年の弘前会場で上映された『50年 夏泊半島ドライブ』が選ばれましたことを申し添えておきます。(K)

参考:阿久比町 町長室だより 第55号 記憶の遊園地
http://www.town.agui.lg.jp/contents_detail.php?co=kak&frmId=2223

初出:映画保存協会メールマガジン『メルマガFPS』 Vol.99(2013.10)、Vol.100(2013.10)

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