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第1回NFC相模原分館見学会 報告

2007年10月2日、小会は団体会員である角川映画株式会社と共同で、東京国立近代美術館フィルムセンター(以下NFC)相模原分館の第一回見学会を行いました(見学会は来年も開催の予定です)。

相模原分館はNFCが所蔵するフィルムを保管する施設です。映画フィルムを保存する専門施設としては日本最大の施設となります。元米軍キャンプ跡地という広大な敷地には35mmフィルムにして約20万巻のフィルムが収蔵可能とのこと。現在は約70%の格納率となっています。

今回の見学は、保存庫とフィルム検査室の見学、復元したフィルムの試写を目的に行われました。

今回、館内を案内してくださったNFCの映画室長、とちぎあきらさんによりますと、日本のフィルム保存庫は少々変わった点があるとのこと。最大の特徴は「地下に保存庫がある」ことです。諸外国のアーカイヴ(保存・保管施設)は大抵、保存庫を地上に置くそうですが、日本は地下に置き、上部は草を生やして(植栽)温度・湿度調整を行います。湿度の高い日本ならではの工夫です。

それでは地下の保存庫に入ります。保存庫は地下1階と2階に分かれています。

sagamihara1まず地下1階は室温10±2℃、湿度40%±5℃に保たれ、寄託フィルム(松竹、角川)、ニュース映画、ビネガー室、仮置のフィルムが保管されています。今回、見学にご協力くださった角川映画では2003年から原版を相模原に寄託しています。一方、地下2階は室温5℃±2℃、湿度40%±5%に保たれており、NFC所蔵フィルムが保管されています。どちらも一定の環境条件を維持するため自動空調システムで24時間管理しています。中はとても寒いので、出入り口には暖かい大きなコートやブーツが用意されていました。

これらのフィルムは、18室ある各部屋に振り分けられ、可動式の棚に整然と整理されています。フィルムは1巻ずつアルミ缶もしくはスチール缶に調湿剤とともに入れられ、トレー式の棚に収められていました。棚には所蔵フィルムのタイトルや制作年数も表記され、「あ!○○○がある!」「これ昔見たなぁ」など、フィルムとラベルを見比べながら皆さんも感慨深げでした。

また、昔の不燃性フィルム(アセテート製フィルム)で、劣化の進んだものは「ビネガー・シンドローム」という酢酸臭のガスを放出します。このガスは他のフィルムにも影響を与えるため地下1階にある別室に収められ、ガスを外に逃がすための装置も用意されていました。

この部屋を設置するきっかけは、平成10~11年に川喜多映画文化財団から1960年代の洋画の寄贈を受けたことに始まります。それらの洋画には日本語字幕が入り、日本にとっても貴重な映画財産でした。そのため、国の補正予算でビネガー・シンドロームに対応した部屋を作ることになったのです。(ちなみに、不燃性フィルムより前に使われていた可燃性のフィルムは千葉の倉庫で管理し、相模原には置いていません)。

また、フィルムは冷たい所→暖かい所/暖かい所→冷たい所と急に出し入れすると温度変化を起こし、フィルムにダメージを与えます。そのため、いったん「ならし室」で温度・湿度を少しずつ慣らし出し入れするという丁寧な作業が必要だそうです。もちろん、季節によって温度を変えながら調整しています。

sagamihara2次はフィルム検査室の見学です。現在、検査室には6名のスタッフが働いています。ほとんどの方がフィルム現像所OBの方で、ここで学びつつ働いているスタッフもいます。現在相模原にいるスタッフは検査室の6名のほか、1名の事務補佐員がおり、全員が非常勤です。

検査室では、スタインベックというドイツ製のフィルム検査機を使いながら、相模原分館に搬送されてきたさまざまなフィルムの検査をここで行います。検査とは、フィルムの長さやダメージ、サウンドの状態などを調査表に記入し、データベース化する作業です。見ているこちらとしては気の遠くなるような作業にも思えましたが、そこはさすがプロ。慣れた手つきでスタインベックを操作し、見学者の我々の質問にも丁寧に答えてくださいました。それでも、やはり1日の作業量としては30~40分ものの映画で3、4本とのこと。やはり大変な作業です。フィルムには片面だけエマルジョン(乳剤)が塗られていますが、真っ暗な現像室でどちらがエマルジョン面かわからない時は「舐めてみればわかるんだよ」という、長年の経験に基づくお話を伺えたのも良い経験となりました。

その後は施設内にあるホールで復元フィルムの試写を行いました。全席200席ある、立派なホールで映画を見るとは、なんとも贅沢な気分です。今回は、NFC所蔵のプリントの中から、今回見学に参加された角川映画さんが提供し、オランダ・ハーゲでジタルカラー復元した『新・平家物語』(1955年)の特報と、(株)IMAGICAが復元した『長恨』(1926年)の2本を観ました。

とちぎさんの説明で心に残った言葉があります。それは「復元の保存の関係」です。より安全・安定し、オリジナル作品に近づくためには「どの素材から復元するか」がすべての基礎となります。オリジナルからと、複製ネガからの復元ではやはり違いが出てきます。また、いくつかあるフィルムの中から良好な素材を選び、議論し、時には様々なパーツを組み合わせてオリジナルに近い復元を目指します。しかし、どの素材を選ぶか、果たして復元したフィルムがオリジナル製作者の意図に近いものなのかという問題は残っています。

現在、NFCは文化庁とともに「古い映画を捨てないでほしい」と訴えています。現場であるNFCも保存の必要性を訴えながら、復元について議論し、1本でも多くの映画を残していく「走りながら考え、議論し、実践していく」印象を受けました。

お忙しい中、小会の見学を快く引き受けて下さった東京国立近代美術館フィルムセンター、ならびに詳しいご説明をしてくださったとちぎあきら様と検査室のみなさまにはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

天野園子

Language: English

小中大

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