ビデオテープ保存のファクトシート

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ビデオテープ保存のファクトシート

本テキストは、映像アーキビスト協会(AMIA)による『The Videotape Preservation Fact Sheets』の「Fact Sheet 13」の和訳です。翻訳を許可してくださったAMIA関係者の皆さま、とりわけLaura Rooney氏に感謝いたします。

The Videotape Preservation Fact Sheets, written by Jim Wheeler with Peter Brothers and edited by Hannah Frost, are a publication of the AMIA Preservation Committee.

(翻訳・鈴木伸和)

災害対策と対応

火事、洪水、地震などの災害時に、磁気テープは非常に損傷を受けやすい。最も一般的なものは物理的な変形、化学的な腐敗、そして表面の汚染の3点である。通常、ほとんどの災害現場おいて、短期間の汚染であれば記録されている信号が検出可能なほど変化することはない。アナログのオーディオテープが高温に晒されることによるプリントスルー※1 の増加は、注目すべき特例である。また、MPテープやMEテープ※2 が水に濡れたり、電磁場に直接接触または近接したりすると、劣化する可能性がある。

災害による大部分の喪失は、テープの物理的特性の変化に起因する。その変化は、記録された信号を正確に読み取るための再生・変換時に、テープを適切に走行できなくさせてしまう。物理的変化の多くは、とても時間に敏感である。そのため災害後にテープを再生しようとするなら、その前に出来るだけ早く補正・修復すべきである。さもないと、損傷が被災直後よりも悪化して恒久的なものになってしまう可能性がある。

最も一般的な被害は水による損傷だ。屋根の水漏れ、洪水、配水管の破裂、浴室に取り付けられた器具の不具合、自治体の下水管の不備、火災用スプリンクラー、飲み物をこぼしたりといった多くの要因が考えられる。

水やそれ以外の様々な液体に触れると、磁気テープの信号構造の整合性は著しく弱まり、そればかりか、磁気テープ表面の摩擦係数が変化する可能性もある。もしテープが濡れてしまったり、高湿度の環境に放置され続けると、再生時の通常の圧力や張りだけでも恒久的な損傷につながるかもしれない。さらに、テープの乾燥具合が不均一であることによって変形が起こる可能性もある。乾燥中に水分中の化学不純物が濃縮し、テープに有害な反応が促進されるかもしれない。例えばカセットシェル内のガイドポスト※3 のように、濡れたテープが他の表面に接触しているところは、乾燥時に表面同士が固着することがある。溜まった水の近くに置かれたテープは水分を多く吸収し、バインダー※4 の加水分解を加速させるかもしれない。水蒸気は菌類(青カビや白カビ)を繁殖させる可能性もある。

火災現場では、火災自体に加え、熱、煙、水、炎、消火剤、そしてガレキ類によってもたらされる危険に晒される恐れがある。汚染物質によってテープに及ぼす影響は異なる。ある一定の熱に晒されると、テープは溶けたり燃えたりするだろう。しかし、火災現場に頻繁に見受けられる損傷は、煙によって引き起こされる。煙は、炎の付近のほとんどのテープに影響を及ぼし、テープの磁性体の表面に油性膜を残留させ、信号の読み取りを妨げる。炎はまた、テープの磁性体表面に沈着するかもしれない大気粉塵を生み出す。

地震の場合、火災や洪水の危険に加え、最も懸念されるのは保管棚からの落下の衝撃と、乾燥した微粒子粉塵にテープが晒されることだ。ほとんどの乾燥した粉塵は磁気テープに化学的影響をもたらすことはないだろう。しかし、テープに接触した粉塵は、再生時に信号の読み取りを妨げることがある。テープのカセットシェル内に入り込んだ粉塵は、テープの磁性体表面の傷や変形の原因になり得る。

災害対策

被災したテープの多くは、初期の段階で壊れることはない。災害後の不適切な処置や救済の遅延に起因する損傷は少なくない。そのため、保管庫の全職員は、災害時に適切な行動がとれるよう準備しておく必要がある。災害対策は組織の職員研修プログラムに不可欠なものの一つだ。

例えばブレーカーやバルブの場所など、テープ保管庫内の様々な特徴を熟知することは重要だ。水道管の状態や、水や化学薬品による損傷が潜んでいる場所は、定期検査を実施せねばならない。

災害復旧会社、ビデオテープの専門家や研究機関だけでなく、組織の管理・財務上の監督職員といった担当者と連絡を取り、応対するべきである。

プラスチック容器、軍手、ビニールシートなど非常用の備品は、テープが保管されている場所から離れていないところに確保し、早急に利用できるようにすること。

災害対応の手順

出来るだけ被害を小さくするために、災害対応の手順を下記に提示する。可能であれば、災害からテープの救済に成功した実績を持つ専門家の手で、救済処置と汚染除去を同時に行うものとする。災害後、出来るだけ早急にビデオテープの専門家に相談することを推奨する。

災害現場で職員が負傷する可能性が無くなり次第、損傷や悪影響から守るためにテープを現場から移動させる。下水が入り込んでいる場合など汚染された物を扱う際には、救済要員は保護服を着用する。テープはプラスチックの箱かビニール袋を敷いた段ボールに慎重に移す。テープはハブ※5 で支えられるように、常に垂直方向に正しく置かねばならない。液体が入り込んでいる場合は、汚染がそれ以上悪化しない方向に変更する。テープは衝撃が緩和されるようにし、急激な温度変化からも守るべきである。

濡れたテープは特に損傷を受けやすく、24時間以内に青カビが発生する可能性がある。青カビの繁殖を予防するため、適切な処置が出来るまで低温環境でテープを濡れたままにしておく。テープを乾燥させる前に、濡れたテープは水害の結果として起こり得る微粒子や化学薬品による汚染を除去しなければならない。

水損したテープの洗浄に使用できるのは、唯一冷たい蒸留水だけだ。ラベルを除く全ての濡れた紙や段ボールは、菌類の繁殖や残留水分を減らすため、出来るだけ早急にテープから隔離しなければならない。菌類が繁殖したテープを扱うことができるのは、専門的な研修を受けたものだけである。

火災による煤煙や、地震による塵などの乾燥した微粒子粉塵は浮遊するので、周囲一帯にすばやく容易にまん延する。汚染されたテープは汚染除去が完了するまで隔離せねばならない。乾燥した微粒子粉塵を除去するのに液体の使用は相応しくない。乾燥した微粒子物質の残存による汚染のリスクがあるなら、テープを入れている保護容器は開けてはならない。なぜなら、保護容器内のテープは、まだ粉塵に晒されていないかもしれないからだ。

適切な汚染除去のためには、磁気テープからハブを取り外す必要があるかもしれない。保護容器、カセットシェル、リール、ハブを分解し、汚染除去をするか、交換を必要とするかもしれない。テープはハブから外れている間、物理的損傷を特に受けやすくなる。分解や汚染除去は適切な研修を受けた者だけが行うべきである。テープは長期保管のためにクリーニングしないまま返却、再生、巻き取りをするべきではない。一時的な保管は、低温環境の安定した場所にするべきだ。テープは事前にクリーニングや再生装置のある場所(の気温・環境)に慣れさせるべきである。

さらに、テープが被災したら、様々な物を適切に維持・管理することが課題となるかもしれない。ラベルの情報は、破損、文字の滲み、紛失等によって失われるかもしれない。テープから取り除いたラベルや容器を救済する努力もすべきだが、しかし、テープ自体の救済を犠牲にしてはならない。もし、汚染除去の手順で保護容器やカセットシェルを磁気テープから取り外す必要がある場合、磁気テープとそれら全ての物を情報としてつなげ、その記録を注意深く残すべきだ。以上

※1 密着したテープ同士の磁気の転写。古いオープンリールのテープに起こりやすい。

※2 MPテープとMEテープの違いは、メタル塗布(MP)とメタル蒸着(ME)という製造方法の違い。

※3 ビデオテープのカートリッジ内にある、テープを走行させる為に必要な棒状の部品のこと。常に磁気テープと接触している部分。

※4 磁気を密着結合させるためにテープのベース層に塗布されたポリマーのこと。

※5 ビデオテープ内部の磁気テープが巻かれているリールの中心部分のこと。

註:原文には〔debris 破片、残骸、屑、がれき類…〕という単語が様々に使用されている。ここでは便宜的に以下の訳語を使用した。
Airborne particulate debris 大気粉塵
Dry particle debris 乾燥した微粒子粉塵
Dry debris 乾燥した粉塵
Dry particle matter 乾燥した微粒子物質
Debris 粉塵 または ガレキ類

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