水害を受けたフィルムについてのFAQ

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水害を受けたフィルムについてのFAQ

Q. フィルムは濡れるとどうなるのですか?

A. フィルムは水に浸かると、エマルジョン(乳剤)とベース(支持体)が分離します。これはつまり、フィルムを形づくっているプラスチックの支持体から、その上に塗布されている画の部分が剥がれてしまうということですから、かなり危険です。さらにカビが発生したり、洪水で運ばれてきた汚染物の悪影響を受けたりすることも考えられます。

Q. どうしてフィルムを冷やす必要があるのですか?

A. 洪水の被害を受けたフィルムの残存を決定づけるのは、どれくらいのあいだ濡れた状態にあったのか、という《時間》と、その間どれくらいの《温度》にあったか、という2点です。高温の環境に置かれていたフィルムほど被害は深刻です。

Q. どれくらい時間が経つと、濡れたフィルムの救済は手遅れになりますか?

A. 一言で答えるのは難しい質問です。ただ、フィルムが専門家の手に渡るのがはやければはやいほど、より良い結果が得られることは間違いありません。しかしたとえ長時間が過ぎてしまっても、そのフィルムがあなたにとって大切なものならば、救う努力はすべきでしょう。全部は無理でも、部分的に救えるかもしれません。

Q. 濡れたフィルムを水につけて保管するのはなぜですか?乾かすべきなのでは?

A. フィルムを乾かしてはいけません!フィルムを水に浸けて保存するのは、乾燥を防ぐためです。濡れたフィルムを乾かす方法は特殊です。誤った方法で乾かすと、エマルジョン層が隣接するベースの裏面にくっついてしまう可能性があります。これは「ブロッキング」と呼ばれる現象です。フィルムがブロッキング状態になると、フィルムの巻きを解くときに必ず損傷が起こります。

Q. フィルムを水に浸けて保存しておくと、何か変化は見られますか?

A. まず、フィルムの色が少しずつ変わります。数日経つと紫または青っぽくなってくることもあります。こうした変化が観察されるとは思いますが、とくに気にしなくても大丈夫です。

さらに数日経つと、フィルムがつるつるしてきます。これはフィルムのエッジのゼラチン質が溶けはじめること、バクテリアやカビの働きが活発になることが原因です。これは危険な兆候ですが、まだこの時点では救済可能です。とはいえ、なるべくはやく現像所に持って行く必要があります。

次に「糸」のようなもの(繊維質)がフィルム上に現れはじめます。これはエマルジョンの薄い断片がフィルムベースから離れて浮き出したものです。こうなると、いよいよ危険で、エマルジョンはもはや洗浄できないかもしれません。できるだけはやく現像所に持ち込んでください。

さらに水が汚く、べとべとねばねばして「灰色のスープ」のようになります。エマルジョンの分解のためです。こなるとフィルムはもう手の施しようながくなります。しかし、フレームに画が残っていればスチル写真として複写できるかもしれません。ここまでひどい状態になっても、現像所へフィルムを持ち込み、救済できるかどうかを判断してもらうことはできます。

Q. 水に入れる前に濡れたフィルムが乾いてしまった場合、何が起こりますか?

A. 一旦濡れたフィルムが完全に乾いてしまった場合、起こりうる被害は二種類考えられます。運が良ければ、フィルムの損傷はそれほど深刻なものではありません。運が悪くても、フィルムの一部は救済の可能性がまだあります。

運が良ければ、エマルジョンの表面が輝いてつるつるになるだけで済みます。特に濃度が高い部分(染料や銀粒子が多く集まっているところ)はこの現象が起こりやすくなり、複製の際には傷となって現れます。

運が悪いと「ブロッキング」という、より深刻な状態になります。フィルムが乾ききるとゼラチン質のエマルジョンがベースの裏面に付着してしまいます。この粘着力はとても強く、エマルジョンが内部で裂ける、もしくはフィルム全体が裂けることがあります。ブロッキングが起こったフィルムの巻きを解こうとすれば、間違いなくフィルムを傷つけることになります。

ブロッキングが起こったフィルムの巻きを解くにはかなり特殊な処置を施す必要があります。危険を伴う作業で、お金もかかります。ブロッキングを解消する処置は、フィルムを守るための最後の手段です。

ブロッキングを解消する処理や、フィルムを回復させる方法についてはAMIA MLに問い合わせてください。復元の専門家が対応します。

参考:「ホームムービーの被害にどう対処するか」には、ハリケーンの被害を受けたフィルムの対処方法、運送時の注意、フィルムだけでなくVHSなどのテープの救済方法についても言及があります。

オーストラリア国立フィルム&サウンドアーカイブ(NFSA)保存・技術サービス部主任研究員 ミック・ニューンハム(著)
*オリジナルは動的映像アーキビスト協会 AMIAのHPに掲載されたものです(翻訳・中川望 2005.08 改訂 2007.07、再改訂 2011.03)

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