TOP > 映画保存とは > 水害対策-KODAK社ウェブサイトより
こちらはKODAK社(US)ウェブサイトより以下を一部翻訳したものです。
Cinema & Telvision>Technical Information>Support>Storage>Storage Room>Water Damage
翻訳にご協力いただきました皆様に心よりお礼を申し上げます。
(翻訳:映画保存協会、監修:小川翔太 DRYDEN BLOG)
もうひとつ、フィルムの寿命を大いに縮める可能性がある危機としては、洪水、消火、配管の破裂、屋根からの水漏れなど、さまざまな原因による水害があります(にもかかわらず、水がなかったら、フィルムは現像できないのですが)。水害からの救出活動をすばやくすることによってその被害を最小限にとどめることができます。水(や泥)のクリーニングサービスを提供している現像所はほとんどありませんが、救出作業はたいてい、以下のステップにしたがって自分ですることが可能です。その場合、器用さ、忍耐と、多くの臨機応変な態度が要求されます。
1.ロール状のフィルムは濡れたままにしてください。乾いてしまうと巻が固まり、フィルムを駄目にしてしまいます。濡れていたり泥まみれになっているフィルムを洗浄作業に入る前に扱う際には、ロール全体を摂氏18度(華氏65度)以下の冷たい水の入った容器に浸してください。冷たい水は、損傷の大きな原因となるエマルジョンの膨張と軟化を防ぐ助けになります。
2.ロール全体を水につけたまま、やさしくフィルムのエッジをこすり、大部分の泥や砂を落とします。水をたびたび交換して作業してください。
3.濡れたフィルムは注意深くゆっくりと巻を解いてください。流水にフィルムを通して、残っている泥や砂を取り除きます。被害がひどい場合は、しつこい粒子を落とすために綿棒でやさしく拭く作業も必要になるでしょう。フィルムを拭くときは注意深くしてください。濡れたエマルジョンは物理的な損傷をとても受けやすいためです。シミを最小限にするため、フィルムを流水(水道水)から、水軟化作用がある洗濯洗剤や台所洗剤(訳注)の含まれた水を張ったタンクに通します。洗浄に使う水に急激な温度の変化がないように注意してください。
4.フィルムを注意深く物干しにかけて空気乾燥させてください。乾燥させる箇所にほこりが着かないように注意し、濡れたフィルムのエマルジョン側の表面になにも触れないようにしてください。フィルムが乾いたら適切なフィルムクリーナーを用いて手作業でフィルムをクリーニングし、リールに巻き取ってください。水害を受けたフィルムを元通りにする理想的な方法は、損傷した個々のフィルムに適した溶液を使って一般的な現像機を通すことです。フィルムの修復・復元をしている企業の中には、手助けしてくれるところもあるかもしれません。
注:この処置法に使う化学薬品は、地域によっては制限されていたり有害物とみなされています。
(訳注)洗剤の使用は水滴の付着や乾燥ムラの軽減に効果がありますが、日本のいくつかの洗剤には酵素が含まれているため、長期的にみてエマルジョンを分解する可能性も考えられます。この点については、実験による検証結果がないため明確には言えませんが、通常の洗濯に使用するより薄い濃度で使用し、かつ酵素成分のないものを使用することをお勧めします。(2011.10.13 映画保存協会)
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