TOP > プロジェクト > 東映ラボ・テック見学会 報告

東映ラボ・テック見学会 報告

映画保存協会メールマガジン『メルマガFPS』Vol.79(2012.02.29)より

2012年1月30日、東映ラボ・テック株式会社様の見学会を開催しました。VPF(ヴァーチャル・プリント・フィー)の導入や米国コダック社の経営情勢など、映画やフィルムについてのさまざま課題が語られる中、関心も高かったようで、定員枠いっぱいの会員が参加しました。

当日は東映ラボ・テック執行役員映像プロセス部の木村栄二氏にご案内いただき、見学前に東映ラボ・テックでの作業を中心にフィルムのデジタル化のほか、コンテンツを扱うデジタルジレンマや課題などについてお話いただきました。その後、地下の現像場や試写室、デジタルプロセスなどを1時間半ほどかけて見学させていただきました。

最初に見学させていただいたのは地下の現像場で、撮影済みのオリジナルネガを現像する現像機のほか、古いプリントやネガについたゴミや油といった汚れを水溶性の薬品で処理する独自開発のクリーナーについて説明いただきました。映写用プリントの現像機はフィルムを焼く密着プリンターと上下階で結ばれ、一貫したシステムになっている様子を見ることができました。

また、東映ラボ・テックでの特徴としてハイマゼンダのサウンドトラックの説明がありました。映画の光学録音のサウンドトラックは環境への負担の少ない「シアンダイトラック方式」への転換が進められていますが、従来の映写機ではサウンドトラック再生部分の交換が必要になります。このため、東映ラボ・テックでは、従来の光学録音用の映写機のままでも、ダイトラック用の映写機でもどちらにも対応できる方式としてハイマゼンダのサウンドトラックを持つプリント処理を行っているそうです。

地下にはフィルム編集室やのほか、試写室があり、所内2カ所にある作業チェック向けのものといわゆる初号(完成品の試写)向けのいずれも見学させていただきました。

フィルム上映される映画になじみの深いものとしては、レーザーによる字幕制作工程があり、現在はデジタル上映の増加により、字幕の制作工程も変化していますが、見学の際には作業されている最中でした。

所内には現在のようなデジタルによる作品制作以前に主流だったタイトル撮影用のアニメーション撮影台(線画台)もあり、木村氏の好意により見学させていただきました。

その他、デジタルインターメディエイトやDVDといったテレシネに関連した工程としては、ウェットゲートつきのネガテレシネ機、フィルムスキャナー、フィルムレコーダーをそれぞれ見学しました。

木村氏からは所内をご案内いただきながら、東映ラボ・テックそのものの歴史についてお話をいただきました。東映ラボ・テックの前身は1951年に創立した小西六写真工業の傍系会社であった「日本色彩映画株式会社」であるため、国産初の実用的なカラー映画システムであるコニカラーの現像処理を行なっていました。現像と感光乳剤の塗布を繰り替えして行うため、乳剤塗布や現像のためにフィルムをベルトコンベヤーで移動させるような大掛かりな作業工程だったそうです。

所内には縦に長く地下室があり、実はこれも日本色彩映画時代からのもので、戦前に陸軍向けに小銃などの製造を行なっていたとされる東京重機工業株式会社から日本色彩映画が、工場用地を譲り受けた際に残っていた地下の銃の試射場なのだそうです(戦後はミシンメーカーとなった現・JUKIで、木村氏によると「銃器」が由来ではないか、とのこと)。

東映ラボ・テックは東京・調布市内にあり、市内にはほかに東京現像所、日活撮影所、角川大映撮影所などの映画関連の企業やスタジオがあります。

現場見学の機会を与えてくださった東映ラボ・テック様、そしてお忙しい中ご案内をしてくださった木村栄二氏にこの場を借りて再度お礼を申し上げます。(SI)

≪東映ラボ・テック≫ http://www.toeilab.co.jp/

Language: English

小中大

twitter

facebook

flickr

今後のイベント情報

06/10
東南アジア太平洋地域視聴覚アーカイブ連合(SEAPAVAA)会議
04/16
国際フィルムアーカイブ連盟(FIAF)会議
04/10
オーファンフィルム・シンポジウム
11/30
東京現像所 全事業終了
10/27
日韓映写技師会議 in 福岡

映画保存の最新動向やコラムなど情報満載で
お届けする不定期発行メールマガジンです。

メールアドレス 登録はこちらから

関東圏を中心に無声映画上映カレンダーを時々更新しています。
こちらをご覧ください。