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富士フイルム足柄サイト見学会 報告

映画保存協会メールマガジン『メルマガFPS』Vol.47(2009.5.30)映画保存見聞録 第6回より

2009年3月12日、小会会員を含む総勢7名は富士フイルム・足柄サイトでフィルムを作る工程を見学させていただいた。足柄サイトはすでに75年の歴史を持つ(1934年に富士写真フイルム設立と同時に活動を開始)。見学当日は快晴で、すぐ近くに(ものすごく大きく)見える富士山の白と青空とのコントラストが美しかった。

まず、我々は工場の紹介映像を拝見し、その後、明るい空の下で記念撮影。フィルム工場で写真を撮っていただくなんて、何だかうれしい。その後、来客者食堂でおいしい昼食をご馳走になりつつ、足柄サイトについてのお話をうかがった。2007年にFIAF(国際フィルムアーカイブ連盟)東京会議が開かれた際には、世界中の研究者やアーキビストでこの食堂がいっぱいになりましたよというお話では、さぞかし賑やかだっただろうと想像した。

昼食後は今回のメイン、フィルムベースに感光乳剤を塗る塗布機の見学である。ヘルメットと白衣を渡され見学スペースに入る。感光材料はエマルジョンと呼ばれる液状なっており、そのエマルジョンの元になるゼラチンを最初に触らせてもらう。葛きりのような乳白色の塊は、光に当てると黒く感光する。柔らかく、プルプルとした不思議な触感。何でも食用ゼラチンよりも質は良いそうだ。

その後、塗布機を見せていただく。今回我々が見た機械は見学用の縮小版だが、エマルジョンの塗布が終わったフィルムをツル巻状に巻きながら乾燥させる部分もあるから、やはりそれなりに大きい。透明のフィルムベースが流れていく上を、富士フイルム独自の技術による塗布装置(スライドコーターというそうだ)から流れだしたエマルジョンがゆっくりと塗られていく。試しにそれを少し手の甲に取ってみるとスベスベでしっとりとした(現在、富士フイルムは今まで培った技術を応用し基礎化粧品「アスタリフト」を販売している)。

液状のエマルジョンを均一に塗布するには緻密な作業を必要とする。地震が起きれば機械ごと揺れて塗布にムラができる。実際、工場敷地内に地震計を設置し、震度1レベルの揺れでも機械を停止してチェックするそうだ。また、エマルジョンを塗布したフィルムを乾燥させる製造ラインには、湿度の多い気候を考えて木材を使うなど、日本の気候を考えた工夫が垣間見られた。

塗布機見学後は質疑応答の時間を設けていただいた。実は小会にはある疑問があった。それはフィルムにエッジナンバーとしていくつかつけられる記号や番号のうち、メーカーがロット番号など、製品の管理のためにつけられる記号「date code(デートコード)」だ。これがあるとフィルムの年代特定が可能になることが多い。

米コダックと同様、富士フイルムにも同じくデートコードと思われるものがフィルム上にはあるが、富士フイルムの8ミリや16ミリについてはデートコードについてはこれまで不明であった。富士フイルムによると、製品管理用のロット番号としてあり、社内に記録もあるはずだが、現時点では日付の特定までは難しいかもしれないという回答
だった。デートコードに関する調査は小型映画を扱う小会にとっても課題である。

質疑応答が終わり、外に出ると袋を渡された。中をのぞくと……「写ルンです」と先ほど撮った集合写真が!お土産までご用意いただくとは。本当にうれしく、そして意義深い勉強をした見学だった。

今回の見学に際して、富士フイルム株式会社の平野様、柴田様ほか皆様には大変お世話になりました。改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。(天野園子)

富士フイルムの詳しい歴史はこちら(フィルム好きには必見のサイト!)
http://www.fujifilm.co.jp/history/

足柄サイトの詳しい歴史はこちら
“豊富な良質の水”と“きれいな空気”――箱根山ろく南足柄に大工場を
http://www.fujifilm.co.jp/history/dai1-03.html

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