2021.07.31.(土)
2021年7月29日の夜、〔サンパウロの〕ヴィラ・レオポウジナ地区にあるシネマテカ・ブラジレイラの建物を襲った火災は、いわば予告された犯罪でした。この火災の結果、ブラジル映画史を構成するはかり知れない数の作品やドキュメントが失われました。レオポウジナの施設は、シネマテカ・ブラジレイラのコレクションの大部分を収蔵するヴィラ・クレメンチノの主要施設を補足する存在でしたが、最近では2020年2月に洪水が発生し、ドキュメントや視聴覚コレクションのほとんどが浸水の被害を受けたばかりです。
昨年わたしたちは、シネマテカの内部にドキュメンテーション・保存・普及を担う労働者が不在であり、いつ火災が起きてもおかしくない状態にあることを公に訴え、あわせてクレメンチノのナイトレート・コレクションが危険に晒されていることも警告しました。ナイトレート・フィルムはとても燃えやすい性質で、定期的な検査(インスペクション)を怠ると自然発火の可能性も否定できません。今回の――シネマテカ設立以来5度目の――火災はナイトレートの発火が原因ではありませんでしたが、いずれにしても、労働者が雇用され、日常業務が滞りなく遂行されていれば、多くの損失を回避できたに違いありません。
シネマテカが政府に見捨てられ、運営母体だったACERP(Associação de Comunicação Educativa Roquette Pinto)から残りの給与や退職金も支払われないまま技術スタッフ全員が解雇されてから、8月8日で1年になります。もっとも、整備・消防・清掃チームは新たに雇用されたようです。整備・消防・清掃は確かにフィルムアーカイブの機能に不可欠ですが、それだけでは不十分であることは、このような惨事の発生からも明らかです。
この1年のあいだ専門的な技術スタッフ不在の中で、フィルム素材とその保存存状態は取り返しのつかない悪影響を受け、状況はさらに厳しくなりました。火災による焼失だけでなく、様々な素材の寿命が極端に短くなってしまったのです。とりわけナイトレート・フィルムやアセテート・フィルムの劣化は深刻です。専門家チームが復帰しない限り、被害の全貌を正しく把握することも、保存活動を再開することも、シネマテカ自体を再建することもできません。
レオポウジナに収蔵されていて、7月29日の火災で失われたか、あるいは何らかの被害を受けた可能性のあるコレクションは、数こそ少ないものの、クレメンチノに収蔵されているコレクションと深いつながりがあり、同等に重要なものでした。その一部を以下に紹介します。
解散した「Embrafilme – Empresa Brasileira de Filmes S.A.」(1969-1990年)のアーカイブズの大部分、「Instituto Nacional do Cinema – INC」(1966-1975年)と「Concine – Conselho Nacional de Cinema」(1976-1990年)のアーカイブズの一部、そして査定段階にあった多くのドキュメント。これら資料の一部は、2020年2月に発生した大洪水の後、再び浸水の被害を受けるのを防ぐため収蔵庫1階から空調設備のある2階へと移された。その2階が主に今回の火災の被害を受けた。ドキュメントの一部はリオデジャネイロの「Tempo Glauber Archive」から取得したもので、グラウベル・ローシャ図書館所蔵資料の複製やシネマテカ自体の内部文書も含まれていた。
配給会社「Pandora Filmes」のコレクションの一部には35mmのブラジル映画および外国映画のプリントが含まれた。ニュース映画、予告篇、広告、ドキュメンタリー映画、劇映画、ブラジル映画の唯一無二の原版やプリント。このコレクションの一部は浸水の影響も受けていた。ECA/USP(サンパウロ大学コミュニケーション&芸術学部)のコレクションの一部で、学生が制作した16mmと35mmの作品、そしてジャーナリスト、グラール・デ・アンドラーデ氏のビデオ・コレクションの一部も。
博物館的な価値に加え、フィルムやビデオの上映や複製には市場に出回っていない旧式の機材が必要である。このコレクションの多くはまた、現役の機材の修理部品の供給源としても役立っていた。
今回の火災を理由の一つとして、わたしたちは焦土化政策と国家の記憶の抹消政策をなんとしても終わらせねばなりません。わたしたちは、〔新型コロナウイルスで〕亡くなった50万人以上のブラジル人の死を悼み、そしてまた、今回経験したわたしたちの歴史の損失を嘆いています。2016年にはシネマテカで、2018年には国立博物館で、そして2021年に再びシネマテカで壊滅的な災害が発生しました。予防可能だったパンデミックによる死者に加え、残念なことに、わたしたちはブラジルの歴史的・文化的遺産の一部まで失ってしまったのです。
もう二度とシネマテカ・ブラシレイラが予防可能な災害に襲われるようなことがあってはなりません。ACERPのような民間団体への運営委託はいかにも脆い失策でした。そのような運営モデルは、大規模で複雑な文化機関には向いていません。政府の公式発表の内容は空虚で、まともな議論もなければ透明性もなく、そこに市民や文化施設の労働者、そしてわたしたち、シネマテカの元労働者グループの声は反映されず、何の解決にもなっていません。また、政府が発表した予算が必要な金額を大幅に下回るものであることをここに明言します。シネマテカ・ブラジレイラに必要なのは、長期的に安定した条件で雇用された技術チームと、ブラジルの視聴覚遺産の保存と普及に見合った予算です。
労働者がいなければ、アーカイブズを保存することはできません!
Workers of the Cinemateca Brasileira
2021年7月末日
(via AMIA-International Outreach Committee)
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