TOP > 映画保存とは > 小型映画研究・グラフ映画とレコードトーキー

小型映画研究・グラフ映画とレコードトーキー

(この記事は、『メルマガFPS』Vol.37(2008.6.30), Vol.38(2008.7.31)に掲載されたものを一部修正したものです)

飯田定信

小型映画と呼ばれるフィルムフォーマット

戦前の小型映画

8ミリをはじめとする小型映画と呼ばれるフィルムフォーマットは、ホームムービーのためのフィルムという印象があるが、かならずしもそれだけではない。小型映画がさまざまなかたちで楽しまれた時代として、戦前の1920年代から1930年代前後というひとつの時期があるが、この時代は標準の35ミリ幅よりも小さなフォーマットがいくつも登場した時期でもある。代表的なものとして、35ミリをちょうど半分にした17.5ミリや、パーフォレーションが中央にある9.5ミリ(通称、パテ・ベビー)、現在でも使われている16ミリなどがあり、なかでも16ミリ、9.5ミリは映写機とともに撮影用のカメラも広く販売された。これらのカメラによってさかんにホームムービーが当時の人々の手によって撮影されたのだが、その一方で家庭に入った映写機はホームム-ビーだけでなく、さまざまな映画を楽しむためにも使われた。

初期のパテ・ベビー映写機は映写できる長さが短いこともあり、提供される作品は数分ほどの短編が多かったが、ほぼ同時期に16ミリが普及しはじめ、パテ・ベビー映写機にも長尺リールが使えるようになると、中編や長編の作品も登場するようになった。いずれも16ミリで製作されるか、35ミリで製作されたものを縮小プリントしたものである。
初期の9.5ミリでは、その短さから紀行や自然などを主題にした教育映画や科学映画が中心で、それ以外では猫のフィリックスのアニメーションやハロルド・ロイドのコメディなどがわずかにある程度だったが、ひとつの全盛期である1930年代前後の9.5ミリのカタログを見ると、海外の作品ではフリッツ・ラングの『メトロポリス』やアベル・ガンスの『ナポレオン』のように数巻からなる長編も登場している。このほかにチャップリンのような人気作品も発売されており、当時の流行をうかがえる。

こういった9.5ミリや16ミリの縮小プリントは日本ではとくに「グラフ」や「ライブラリー」という名で呼ばれ、専門のプロダションや業者によって販売や貸出が行われた。「グラフ」と「ライブラリー」の違いはフィルムの提供方法の違いで、貸出しが「ライブラリー」、販売が「グラフ」と呼ばれていた。もっとも盛んだったと考えられる昭和5年前後には、これらの業者が十数社程度存在し、業者ごとに特色があった。教材向けの作品を中心とし、独自製作した作品を提供する業者や、ニュース映画を得意とする業者などが見られた。

代表的な業者としてはフランス・パテ社によるパテ・ベビー向けのフィルムを販売していた東京・銀座の伴野文三郎商店(伴野商店/伴野貿易、東京・銀座)があるが、ほかにコダック社の日本代理店であるコダック・ジャパンが16ミリを国内向けに販売しており、小西六もサクラグラフという呼び名で、漫画映画や教育映画を販売していた。

とくに人気があったのは……?

これらのなかで、当時とくに人気があったと考えられるのは映画館で話題となった作品を縮小プリントしたグラフ物ではないだろうか。映画本編の多くは1時間が超えるものであり、グラフは10分か十数分程度のいわば短縮版であるが、映画会社や各プロダクションからさかんにグラフ物が出され、松竹キネマの松竹グラフ、日活作品の日活グラフ、マキノプロダクションのマキノグラフなどがあった。劇映画以外では千代紙映画社の千代紙グラフがあり、これは大藤信郎のアニメーション作品のグラフ版である。

グラフのなかには映画会社やプロダクションによっては販売店と専属的な契約を結んで専売されるものもあった。伴野商店は日活グラフと契約しており、9.5ミリ映写機や蓄音器、16ミリ映画を販売していた十字屋(東京・銀座の楽器販売店、現存する)はグラフ物をマーベルグラフという名で呼び、契約を結んだマキノグラフや松竹グラフの作品を販売している。人気のある作品によっては16ミリと9.5ミリの両方が作られることもあったようだが、千代紙映画社の千代紙グラフのように16ミリは十字屋扱い、9.5ミリは伴野商店扱いというものある。
これらグラフ映画となった作品を伴野商店のカタログや当時の専門誌「小型映画」などから拾っていくと、松竹では『斬人斬馬剣』、日活の『血煙高田馬場』、ほかに小津安二郎の『大学は出たけれど』などもカタログに見ることができる。なお、『和製喧嘩友達』のように後年、これらのグラフから、失われた作品がしばしば復元されており、ニュース映画やアニメーション、劇映画など多数のラインナップを誇った小型映画のグラフは、単なる35ミリからの短縮版というだけでなく、保存され、調査されるべき遺産としても見ることができる。

Language: English

小中大

twitter

facebook

flickr

2017年11月
« 10月 4月 »
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930 

開室日 イベント開催日

開室日はお問合せください

今後のイベント情報

05/04
ナイトレート・ピクチャー・ショー
04/11
オーファンフィルム・シンポジウム
04/07
東南アジア太平洋地域視聴覚アーカイブ連合(SEAPAVAA)会議
11/29
動的映像アーキビスト協会(AMIA)会議
11/13
日本映画テレビ技術協会創立70周年記念 アーカイブシンポジウム

映画保存の最新動向やコラムなど情報満載で
お届けする月刊のメールマガジンです。

メールアドレス 登録はこちらから

「はてな」のサービスを利用して関東圏を中心に無声映画上映カレンダーを作成しています。
こちらをご覧ください。