TOP > 映画保存とは > (結論)シンポジウム「視聴覚アーカイブはなぜ重要なのか」
第18回SEAPAVAAビエンチャン会議(ラオス人民民主共和国)
会期:2014年5月26-27日
シンポジウム「視聴覚アーカイブはなぜ重要なのか(AV ARCHIVES: WHY THEY MATTER)」
1 視聴覚アーカイブや視聴覚記録は、単なる娯楽でなく、生活のあらゆる側面を包括するものである。「記憶のない世界を想像してごらん」(※)という惹句が訴えるように、視聴覚アーカイブ活動に注力しなければ、我々はどれだけ貧弱になってしまうかわらかない。その認識を高められるかどうかは、我々次第である。
訳注 ※ ユネスコ世界の記憶のスローガン “imagine a world without memories”
2 我々は、コレクションの利用者のためにオリジナルの体験やコンテクストを再作成する努力を惜しまない。しかし、真正な再作成と真正で理想化された再作成とは異なる。
3 映画は国の歴史を記録するための黄金の碑である。
4 小規模なアーカイブズ機関には、コレクションの物理的な保管場所が——デジタルストレージとは対象的に——実際に必要であろう。
5 視聴覚アーカイブが公的資金を生産的に使っていることを確かめるには、上映や展示といった良質で今日的なアクセスのプログラムが欠かせない。
6 参照される真正な一次資料として、視聴覚記録の学術的地位は、未だ伝統的な文書記録のそれより低い。視聴覚アーカイブのアドボカシー活動なくして、この状況は変わらないだろう。
7 重要なフィルムを断片的な調査資料に留めることなく、再び誰にもアクセス可能なものにするには、再構築が欠かせない。再構築を倫理にかなったものにするのは、最終的には視聴覚アーカイブの仕事である。
8 ブランド設定:自覚しているかどうかは別として、すべての視聴覚アーカイブにブランド(ロゴ、惹句、名称等)がある。信頼、感傷、評価を喚起するものとして、名称は大切である。ブランドは有効かつ賢明に運用する必要がある。
9 ユネスコが定める「世界視聴覚遺産の日」は、あらゆるアーカイブズ機関が自らの仕事の普及促進に利用できる重要な記念日である。その存在によって、事実上、ユネスコがいかに視聴覚アーカイブが重要であるかを述べていることになる。
10 アーカイブズ機関の専門性の発展は、時に本質に逆らい、リスクを冒し、さらに良い成果を求れば、感情を害することにさえつながることがある。
11 伝統的なアーカイブズ機関は、iPhone、パソコン、ソーシャルメディア等による「市民のアーカイブズ」によって補完される。とはいえ、ソーシャルメディアは永続的なアーカイブズ機関としては機能しない。ソーシャルメディアが課す法的条件に目を通す者は少ないが、アップロードされた素材のかなりの部分を経営者側が利用し、かつ管理できるようになっていることから、不可欠なメタデータが剥奪されてしまう恐れもある。誰が信用できようか。
12 アーカイブズ機関の精神は積極的な関与や奨励にあり、内向き思考はいただけない。新しいことを試そう!創造的になろう!
13 オーファン資料は、伝統的なアーカイブ活動の駆け引きの中で無視されてきたものである。それは伝統的な視聴覚の概念を超えて広がっている。
14 「世界の記憶」とは実際のところ何なのか?それは人々の集合的記憶である。
>> ユネスコ 《世界の記憶》
15 法的義務と倫理を同一視してはならない。
16 利用者はメタデータを向上させる。彼らがコンテンツにコメントを加えることができて然るべきである。
17 クラウドのバックアップにおいては、オープンソースの交換形式を使用するのが賢明である。
18 物的管理を目的に、視聴覚キャリアを他メディアと統合するのは、必ずしも正しい方針ではない。
19 文化遺産と民間企業の資産は同一のものではない。後者は、企業によって自らの利益のために維持される。おそらく収入がとくに期待されない前者は、公共団体によって維持される必要がある。
20 長期的思考——永続的な保存に必須の条件——は、政府その他機関の短期的思考の犠牲になることがある。適正な予算を与えられ、あるいは適切に保護されているアーカイブズ機関など存在しない。奮闘は今も続く。
21 好むと好まざるとにかかわらず、我々はアドボケート(アドボカシーをする人、提唱者)になるしかない。
結論:視聴覚アーカイブは重要か?以上のことから明らかなように、答えは「YES」である。
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