洪水や津波の被害を受けた《視聴覚メディア》の応急処置

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洪水や津波の被害を受けた《視聴覚メディア》の応急処置

“First Aid for Water Damage”
Courtesy of the National Film and Sound Archive of Australia

オーストラリア国立フィルム&サウンドアーカイブ(NFSA)のウェブサイトに掲載されている情報を参考に作成しました。翻訳および画像の使用許可をくださったNFSAのロッド・バトラー氏、ミック・ニューンハム氏、クエンティン・ターナー氏に感謝いたします。

* PDF版はこちら(全3ページ)です。【PDFは2011.08.08作成の最新版です】

 映画フィルムも磁気テープも水に脆弱で、損壊物なども含むような汚水からはとくに酷い被害を受けるものです。被害の受け方も、その後の悪化を防ぐ方法も、メディアの種類によって若干異なりますが、何れにしても〈迅速に〉しかるべき処置を施せば、ダメージを抑えることができます。だからといってコレクションの救出を試みて、あなたの身が危険にさらされるようなことがあってはなりません。洪水や津波の直後は予測できない二次災害が起こり得るばかりか、水に浸かったメディアには生物学的/化学的な危険物が含まれることも考えられるので、衛生面にも十分注意してください。
 オーストラリア国立フィルム&サウンドアーカイブは、こうしたメディアの被害を悪化させない方策について情報を提供し、皆さんのかけがえのないメディアを蘇らせるためのお手伝いをします。

 Step 1. そのメディアは海水/汚水/泥水に直接触れたでしょうか?
 はじめに、そのメディアが本当に水に濡れている/濡れていたかどうかを確かめます。なぜなら、フィルム缶やカセットテープのケースなどが防水の役目を果たすことも少なくないからです。もし濡れていないなら心配ありませんが、湿気によって発生しやすくなるカビなどに注意しましょう。

 Step 2. 箱書きやラベルなどはありますか?
 次に、そのメディアに何か固有の情報があるかどうかを調べて、記録を残します。メディア自体、あるいはその容器に書かれた情報は、消えてしまったり読みづらくなっていたりすることも考えられますが、どんな些細な情報でも記録を残しましょう。中身のわからない“オーファン“CDなどには、何らかの番号や名称を与える必要があります。

“オーファン“CDに紐で名札を取り付ける ▶

Step 3. 選別方法は?
 おそらく救済の段階で、メディアに対して優先順位を付ける必要が生じます。とはいえ、コンテンツがわからない中で特定のテープやフィルム選び取るのは至難の業でしょう。そこで、ここでは視聴覚メディアを救済し、その状態の悪化を抑えるためにできることを、ごく簡単に説明します。ただし以下で説明する作業は〈コンザベーション〉と呼べるようなレベルにはありません。メディアを再生するなら、その前にもっと詳しく調べるか、できることなら経験豊かな専門家に作業を委ねてください(さらに詳しい情報はNFSAまたはAICCMのウェブサイトに掲載されています)。

[フィルム]
 水害を被ったフィルムの生物学的なダメージの内、最も深刻なのは〈カビとバクテリア〉によるものです。カビもバクテリアもあっという間にフィルムをだめにしてしまうほどの威力を持ち、人体にも悪影響を与えることがあります。もしフィルムがカビに覆われているようなら、何があっても素手で触れないように、また、その胞子を吸い込まないように注意してください。

◀ バクテリアの被害を受けたフィルム

 汚水に浸かったフィルムは、入手できる限りの清潔な水ですすいで、泥など付着物を落とします。何らかの識別システムを構築するため、フィルム1本ごとに固有の名称を与えます(例えば既に付いている題名を使うこともあれば、コンテンツなどから新たに仮称を与えることもあるでしょう)。〈冷凍庫〉が使用できる環境にあれば、フィルムをフリーザーバックなどに入れ、しっかり密閉し、袋にラベルを付けて冷凍します。冷凍庫がなければ、フィルムをバケツの冷水に浸し、毎日その水を新しくしてください。これによってフィルムはおよそ2週間保ちますが、それ以上経つとバクテリアの被害を受ける可能性が高まります。

蜘蛛の巣や泥などが付着したフィルム ▶

 さらなるダメージを回避するため、たとえ外見の状態は良さそうに見えても、水に浸かったフィルムの巻きを解かないでください。くっついているフィルムを無理に引き出すと、取り返しのつかない損傷になりかねません。専門家の助言なしにフィルムを乾かすことも危険です。

◀ カビの生えたVHSテープ

[磁気テープ](VHSのビデオテープ、カセットテープ、オープンリールなど)
 磁気テープにはカビが発生しやすので、扱うときにはやはり健康に留意してください。しかしながら、何より先に深刻な問題を起こすのは〈バインダー〉と呼ばれる部分の劣化です。MiniDVは様々な素材から成り、その何れもが水に弱いため、水害を被ったMiniDVの回復率はあまり高くありません。したがって、ある程度の損失は覚悟してください。汚水に浸かった磁気テープは、出来る限りきれない水ですすぎます。このとき、できることなら水道水は使わず、ペットボトルの水か蒸留水を用意してください。水道水の〈塩素〉はテープに悪影響を及ぼすことがあります。ラベルが剥がれかけたり、完全に剥がれたりすることもありますが、ラベルとテープ本体がばらばらにならないようにします。固有の識別情報がなく、再生してコンテンツを知ることもできない場合は、識別できるような仮称や番号を与えます。さらなるダメージを回避するため、テープは冷暗所に保管します。ただし、冷凍はしないでください。無理に乾かすのは逆効果です。可能であればテープが乾ききる前に専門家の元に届けてください。「大丈夫かどうか確かめる」ためにテープを再生すると、テープが損傷を受けるだけでなく、再生機まで壊れてしまう危険性があります。

 泥の付着したオープンリール ▶

[ディスク](LPレコード、光学ディスク類=レーザーディスク、CD、DVD、ブルーレイなど)
 ディスク類は汚水に浸かってすぐにだめになることはありませんが、光学ディスクは長く放置しておくと影響が出ます。カビが生えることもありますが、それはディスク自体というより、むしろライナーノートやジャケットなどが受ける被害です。カビに覆われていたら、素肌の接触を避け、胞子を吸い込まないようにするなどの注意を怠らないでください。例えばホームムービーを記録したDVDなどのディスクには、ちゃんとしたラベルが付いていないことが多いので、紙片などを工夫して一時的なラベル代わりに使用してはどうでしょうか。ディスクはできる限りきれいな水ですすぎます。LPレコードの真ん中のラベルが剥がれかけたり、完全に剥がれたりしたら、ラベルと本体とが離ればなれにならないようにします。すすいだ後は、埃をかぶる心配のない場所で自然乾燥させます。LPレコードは、再生する前に必ず洗浄してください。権利的に複製が許されているCDやDVD(例えば非営利目的のもの)は、すぐにコピーを作成すべきです。すすぐだけでは落ちにくい泥などの付着物を落とそうとして、LPレコードの表面を擦ったり拭ったりしてはいけません。CDの場合、表のラベル面が最も重要な部分を保護する役目を果たしています。そのラベル面が汚水の被害を受けやすい素材でできていることがありますので、擦ったり拭ったりしないでください。無理に乾かそうとしてはいけません。
 
 これ以上の作業を進める場合は、専門家の助言が欠かせません。視聴覚メディアはとても脆弱で、扱いを謝ると、意図せずしてそのすべてが台無しになることも起こり得ます。ほとんどの損失は〈水害の後で起こっている〉ことを忘れないでください。つまり、応急処置を施し、専門家の助言を仰ぐことこそが、あなたの貴重なメディアを守り、蘇生させるために、最も確実な方法なのです。

(日本語版制作:映画保存協会)

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